このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

あの素晴らしい日々をもう一度

決着はあっけなくついていた。

雪之丞は心眼が放つ霊波砲を受けながらも前に進むが、横島は危機感からか今まで以上のスピードで逃げたのだ。

そのあまりに気迫の籠った最後の一撃に会場は静まり返り、横島ですらも倒れた雪之丞を信じられないように見つめている。

結局雪之丞の最後の一撃も横島には届かなかったが、あと一歩雪之丞が心眼の攻撃に耐えられれば勝敗は逆だったかもしれない。

それだけ雪之丞は横島に近く事が出来ていた。


「あいつ……。」

「彼にとって勝敗はもうどうでも良かったのですよ。 全力で戦うことがあの時の彼には全てだった。」

何故あんな無謀な決戦に挑んだのか横島には全く理解出来ないが、それでも雪之丞の気迫と覚悟は横島にも届いている。

心眼に守られてる自分ではあり得ない気迫と覚悟に流石の横島も考えさせられるものがあった。

そんな横島には理解出来ない雪之丞の心情を話して聞かせる小竜姫は、いつになく静かな横島がこの試合で得た経験の多さに笑みを浮かべる。

横島がこの先どんな道に進むかは小竜姫にも分からないが、もし自分と離れることになってもきっと今日の試合は横島の役に立つ。

そう確信が持てたからかもしれない。



「小竜姫様! 大変です!! メドーサと鎌田勘九郎が消えました。」

そのまま横島と小竜姫はミカ・レイ姿の令子と共に次の試合を待つことにするが、そんな時予想もしなかった報告をしに来たのは唐巣であった。


「ちょっと、先生どういうこと?」

「メドーサは少し目を離した隙に本当に消えてしまい、鎌田勘九郎は控え室に入ったっきり出てこないので確認したらすでに居なかったらしい。」

そのあまりの展開に令子と唐巣は驚きを隠せない様子で対応を話し合うが、小竜姫もまた歴史とは違う展開にメドーサが消えた訳を考える。


「どうやら鼠は一匹ではなかったようですね。 GS協会のそれも今日この場に来た幹部クラスにも紛れていたのかもしれません。」

ヒャクメほどではないが注意深く周囲を探る小竜姫だが、すでにメドーサ達の気配はない。

しばし考えた小竜姫は未来の時には明らかにならなかった内通者の存在を確信していた。


「そんな! まさか!?」

「私が戦いを避けて合法的に計画を潰すことに気付いたとしか思えません。 用心深いメドーサのことです。 こちらの動きを探る為に内通者でも用意していたのでしょう。」

それはあくまでも小竜姫の憶測だが、メドーサならば策を二重三重に用意していても不思議ではない。

聞けば雪之丞は医務室に残ってると言うし、小竜姫が白龍会で根回ししたことや雪之丞を説得したことを知られたのだろうと思う。

あのまま試合を普通に終わらせて後日勘九郎へのGS免許資格剥奪を言い渡せば、今日この場に来て何もしないで帰らねばならないメドーサはピエロになるのだから。

ならばこの時点での計画の放棄もおかしな話ではない。


「なかなかやりますね。 メドーサも。」

小竜姫の憶測に顔色を真っ青にした唐巣は内通者が居る可能性が高いと判断して内通者を特定する為に慌てて走っていくが、まさかこれほど早い段階で計画を放棄するとは思わなかった小竜姫はその手際の良さに素直に感心していた。


「それにしても逃げるのが早い気がするけど?」

「先程の試合で横島さんの実力をかなり知られましたからね。 美神さんだけでも厄介なのに横島さんにも勘九郎では勝てません。 更に二人が組めば捕らえることも出来ますからね。 恥の上塗りになる前に撤退するには今しかないと思いますよ。」

あまりにも呆気なく戦いすら起きぬ幕切れに横島も令子も拍子抜けした感じが否めないが、小竜姫はやはり未来とは違う横島の実力が計画を放棄したポイントだと見ている。

試合という形ならば令子も横島も勘九郎には不利だが、それでもどちらが当たっても最終的には勝てるだろうと小竜姫は考える。

加えて万が一試合で消耗した勘九郎を令子と横島が二人で挑めば勘九郎を捕らえることも出来るだろう。

放置されても戦っても恥をかくなば、どのみち勘九郎にGS免許の可能性が消えた以上長居する理由はない。



30/48ページ
スキ