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その一

 
 
 第三話 アダムとイブ


その日、横島は釣りをしている

見渡す限りの海を見ながら…

隣にはいつの間にか眠ってしまった彼女が居る


海は大きく深い

空は高く広い


横島は隣にいる最愛の女性の穏やかな寝顔を見ながら幸せをかみしめる


ピクリとお手製の釣り竿が動く


竹に糸がついたシンプルな竿だが、よく釣れる

横島が注意深く竿を見ると…

ピクリ

再び動く


横島はタイミングを計り、次に動いた瞬間竿を引っ張る!


「今日は刺身だ!!」

横島の叫びと共に竿は舞い上がり、糸の先には見たこともないグロテスクな魚がついている


ピクピク!

魚は逃げようと暴れて、横島の隣で寝ている彼女の顔に直撃する


「わっ! ちょっとヨコシマ!! ビックリするじゃない!」

気持ちよく眠っていた彼女は、頬を膨らませて横島に抗議するように見つめる


(うーん、怒った顔も可愛いな~)

横島は彼女の怒った顔に思わずデレデレになる


「ちょっとヨコシマ!! 私は怒ってるのに、何でデレデレするの?」

彼女は怒った顔から呆れた顔になる


「いや~、ルシオラの怒った表情も可愛いな~って思ってさ」

横島は頭をかき、照れたように話す


「えっ…!? いきなりそんなこと言われても…」

ルシオラはモジモジと体をくねらせながら照れている


「ル…ルシオラー!!」

横島は照れてるルシオラに理性が飛んで、飛びかかる!


「キャッ!! ヨコシマ!? もう~」

ルシオラは驚き横島を見るが拒否はしない


「ルシオラー!! 愛してるぞ!!」

横島は煩悩のまま突っ走る


「ヨコシマ! 夜までお預けよ! 昨日も夜明けまでシタじゃない!!」

最後まで突っ走りせうな横島にルシオラはお預けを言い渡す


「そんな~ ルシオラは俺が嫌いになったんだな!!」

横島はこの世の終わりのような暗い表情で泣き叫ぶ


「私は夜まで待ちなさいって言ってるの! いくら私達しか居ない島でも恥ずかしいじゃない!」

ルシオラは顔を真っ赤にして横島に言い聞かせる


「う…、ルシオラのケチー!! 悪魔ー!!」

横島は涙を流して海に向かって叫ぶ!


「誰がケチですって! 昨日あれだけシテおいて! それに私もあなたも今は魔族でしょ!!」

ルシオラは駄々っ子を言い聞かせるように横島に話す


「あんまり騒ぐとまた一週間お預けをするわよ!」

ルシオラは横島にとどめの言葉を放つ


「お…俺が悪かった…。 一週間は完璧してくれ!」

横島はルシオラに抱きつくように謝る


「もう~、いつまでたっても変わらないんだから…」

ルシオラは横島を暖かい眼差しで見つめて抱きしめる


「ヨコシマ…、後悔してない? 全てと引き換えに私を選んで…」

ルシオラは少し不安そうな声で横島の耳元で囁く


「うーん…、正直わからん。 俺はただお前と一緒に居たかっただけなんだ… あの時、お前を見捨てたら死んでも死にきれん。 どっちを選んでも満足のいく結果でないなら、ルシオラと一緒に生きたかったんだ」

横島はルシオラの不安を拭うように強く抱きしめる


「ヨコシマ…」

ルシオラは目を瞑り、横島に甘えるように身をゆだねる


「俺は逆天号に居る時、一度隊長に見捨てられた。 だけどルシオラは命を捨ててまで俺を助けてくれた。 最終的にはそのことが大きかった。 世界が変わっても何が変わってもお前と一緒なら何も怖く無いんだ」

横島は優しくルシオラに語りかける


「ヨコシマ…、愛してるわ」

「ルシオラ…、俺も愛してるよ」

2人は長い抱擁の末にキスをかわす


それはごく平凡な1日…


新しい世界のアダムとイブの物語


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