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麻帆良祭

一方麻帆良ホテルでパーティーを開いていた近右衛門だが、パーティー終了後にホテルの別室にて清十郎と千鶴子と三人だけで顔を合わせていた


「ワシらが顔を合わせただけで騒ぎおって。 友人に会うだけで騒がれたらたまらんわい」

ルームサービスで頼んだ飲み物が届くとため息混じりに愚痴をこぼしたのは清十郎である

元々近右衛門達三人は学生時代からの友人であり、若い頃からいろいろ助けあって生きて来たのだ

三人共に世の中に影響力を持つ立場になったが、彼らも最初からそれを望んだ訳ではない

バブル景気と崩壊や魔法世界の戦争など時代の中で、努力した結果であり成り行きでなった立場とも言えた

清十郎と千鶴子は第一線を退いており半ば隠居暮らしなのだが、それでも顔を合わせるだけで騒がれるのは気持ちのいいことではない


「仕方ありませんわ。 今だにバブルのツケを払ってる企業も多いですし、また何か起きるのかと勘繰るのは当然でしょう」

清十郎の愚痴に千鶴子は穏やかな笑みを浮かべたまま仕方ないと告げるが、彼女も本心ではいい気持ちはしてない

だが土地価格や株価が高騰して日本がバブル経済で加熱していた頃、雪広・那波両グループはすでにかつての世界恐慌のようなバブル崩壊を警戒して拡大路線を変更していた

正直どこまで景気が続きいつ崩壊するかなど清十郎でも分かるはずがなく、そもそも本当にバブルが崩壊するかなど誰にも分からなかった時代である

そんなバブルの真っ只中に堅実路線に変更した両社を当時の財界や政界は馬鹿にしていたという

実際に当時親交があった企業も彼らの方針は理解せず、関係が疎遠になった企業は数知れない


「連中は勝手に自滅しただけなんじゃがのう」

バブル崩壊についての説明は避けるが、実際雪広・那波両社もバブル崩壊のダメージは受けている

しかし両社は株式非上場企業であり株価の下落はそれほどダメージがなく高騰する株価や土地の取引を途中で辞めたため、むしろ崩壊後の国内経済の低迷によるダメージが大きかった

現在では日本経済に影響を与えると言われる両社だが、別に両社の躍進ではなくただ単に他の企業が落ちただけだったのである


「まあその話はいいとして……。 向こうの国が動いてるとか。 実際どうなんですか?」

しばし愚痴を言っていた二人だったが、話を区切った千鶴子は無言を続けている近右衛門に本題を尋ねていた

彼女がわざわざ公式なパーティーに来たのは他でもなく、メガロメセンブリアとの問題に備えての親交企業の引き締めである

直接的な影響は少ないだろうが、嫌がらせ紛いの工作や妨害などは可能性があるのだ

親交企業の引き締めと連携強化は必要不可欠であった

雪広・那波の方針に同調して協力している企業を守るのもまた、彼ら三人には必要なことなのである


「元々は一人の子供をどうするかの話だったんじゃがのう」

近右衛門は少々疲れた表情を見せながら詳しい事情を話していくが、千鶴子も清十郎も表情は険しい

原因の子供は可哀相だと思うが、正直余計な問題を起こしてくれたとも感じる



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