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真の歴史へ・その三

「えっ!? カオスのおっさんがいるの!?」

令子の元に戻った西条が服を渡して聞いてきた情報を伝えると、令子は驚き信じられないような表情をする

まさか中世の時代に来てまで数少ない知り合いに会えるなど思いもしなかったようだ


「ああ、ここを根城にしてるらしい。 最も今は地中海に行ってるようだがね。 なんとかして彼に会えれば、現代に帰る方法が掴めるかもしれない」

少し浮かれた表情の西条がそこまで話したところで、ふと二人は周りに気配を感じる

令子と西条はすでに現地で調達した服に着替えており、二人は静かに顔を見合わせて戦闘体制に入った


(囲まれてるわね)

周囲を取り囲むような気配に令子は、西条を少し睨みつける

どう考えても西条が尾行されていたのは確かだった


「どうやら本当にカオスを知る魔道士らしいな。 ヌル様のご命令により捕らえさせてもらう。 死にたくなければ抵抗するなよ」

森の茂みから現れたのは、全身に黒い鎧を着たゲソバルスキー男爵である

そして周囲には部下らしき鎧兵士がおよそ20人は見えた

彼らは令子と西条を捕らえようと動き出すが、西条がそれに抵抗するように銃を発砲する


「君達は人間じゃないね? 随分怪しい気配がするのだが」

銃の発砲により止まったゲソバルスキー達に、西条は半ば推測を含めて問い掛け始めた

ゲソバルスキーも鎧兵士達も気配自体が人間とは違っており、まるで妖怪や魔族に近いと感じる

まあ西条自身それほど霊感や霊視が得意でない為、相手が何かわからないが人間か人間でないか程度なら過去の経験からなんとなく判別出来るようだった


「どうやら死にたいようだな」

西条の問い掛けに表情が険しくなったゲソバルスキーが何かの合図を送ると、周囲にケモノの雄叫びのような声が響き渡る


「ギョアアアー!!」

ゲソバルスキーと見合うようにして周囲を警戒していた西条と令子の背後の場所から、凄まじい雄叫びと共に現れたのは動く怪物の石像〈ガーゴイル〉だった


「ちょっ……、なんであんなモノを!!」

ガーゴイルの姿に、令子は先日の香港の事件を思い出してしまう

あの時は人型だったが、また似たようなモノと戦う事になるとは思わなかった


「クッ……」

西条はとっさにガーゴイルを銃で数発撃ち令子を庇うが、たいしたダメージは与えられないようである

「なんか相当ヤバイ場所に来ちゃったみたいね。 見なかった事にするから、今日は引き分けにしない?」

西条が事態の打開方法を考える中、令子は軽い調子でゲソバルスキーに話しかけていた

正直ゲソバルスキー達が何をしてようが、令子にはどうでもいいのだ

過去の時代の事だし、仮に彼らが何を企んでいようとも700年先までは関係無い


「貴様らカオスの関係者だろう? ヌル様からカオスの関係者は捕らえるように言われている。 無論殺しても構わないがな」

「直接会った事はないわ。 私達も探してるよ。 見つけたら教えるから、今日は解散って事で……」

令子はそこまで話すとゲソバルスキーに精霊石を投げつけた


「貴様っ!!」

精霊石によりゲソバルスキー達が軽いダメージを受けて怯んだ隙に、令子は西条を連れて逃げ出していく


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