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麻帆良祭

「横島さんって本当によく食べますよね」

誤解をしたり心配したりと何かと忙しい明日菜だが、おかげで最初の緊張感や意識した感じは全く無くなっていた

お好み焼き屋を出た後も次々に屋台などで買い食いする横島を明日菜は半ば呆れながら見ている


「一口食ってみろよ。 美味いぞ」

「うぅ……、麻帆良祭終わって太ったら横島さんのせいよ」

よく食べると呆れ気味の明日菜だが、横島に進められると食べたくなり一口食べてしまう

明日菜は結構お腹いっぱいなのだが、一口くらいならば食べたくなるらしい


「気になるなら麻帆良祭が終わったらダイエットメニューでも考えるから心配するなって」

「本当ですか!?」

食べすぎで太るのを気にする明日菜に横島は、相変わらずの軽い調子でダイエットメニューを考えると告げる

横島をよく知らない人ならいい加減にも聞こえる言い方なのだが、料理に関して横島は期待を裏切ったことはない

明日菜は思わず喜びの表情を見せるほど期待してしまう


「楽勝よ楽勝。 無理をしないダイエットメニューを考えてやるって」

期待されると調子に乗って楽勝だと言い切る横島に、明日菜はホッとしたのか横島と一緒に買い食いしてしまう

まあ明日菜は一人分は多いので結局一人分を買って二人で分けて食べるのだが、明日菜はそんな姿が端から見るとどう見えるかを相変わらず気付いてない

この辺りの鈍感さもまた彼女がバカレッドと言われる由縁なのだろう


「うわ~、凄い輪投げ屋ね」

さてそんな横島と明日菜がふと立ち止まったのは、自称世界最大の輪投げ屋と書かれたイベントである

基本的には普通の屋台の輪投げと変わらないのだが、違うのが距離であり奥行き最大十メートルになっていた

十メートル先の一番の目玉商品はハワイ旅行なのだが、今のところゲットした者は居ないらしい


「十メートルは輪投げで届くのか?」

「私やろうかな」

このイベントというか大型屋台は輪投げ研究会なるサークルが主催してるらしいが、遠くに行けば行くほどいい商品があり結構混雑している

明日菜は八メートル付近の商品券三万円が欲しいらしく挑戦するようだ


「うりゃあ!!」

掛け声と共に明日菜が投げた輪は目標の八メートル付近を軽々越えて、九メートル付近までスルスルと飛んでしまう


「あっ……」

「はっ入りました! 本日最長の九メートルの全自動洗濯乾燥機をゲットしたのはなんと中等部の女の子だ!!」

思わず驚きの声を上げた横島だったが、明日菜の投げた輪はなんと九メートルの場所にあった全自動洗濯乾燥機をゲットしてしまう

まさかの出来事に周りの見物人は一瞬沈黙するが、運営側が洗濯機ゲットを告げると明日菜は歓声と拍手に包まれる


「あっ……ありがとうございます」

まさか本当に商品をゲットするとは思いもしなかった明日菜は、狙ってもない洗濯機を当ててしまい一瞬どうしていいか分からないようだった

しかし歓声や拍手が周りから起こるとそれに答えるように、少し恥ずかしそうに頭を下げていく

そして明日菜は高額商品ゲットした人として、写真付きの名前が高らかと掲げられることになる



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