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真の歴史へ・その三

「とりあえず噂以上に目新しい物はないな」

大樹と百合子が帰国して一週間が過ぎた頃、本格的に調べていた南部グループの中間報告を検証していたが今のところめぼしい情報は掴めてなかった

まあ叩けばほこりの出て来るようなとこはいくつかあるが、それは決して珍しい事ではない

特に横島達が気にしそうな事は見つかってなかったのだ


「怪しいと言えば全部怪しい会社なのよね。 特に資金の流れが海外を複数経由して複雑に絡み合ってるわ。 一応帳簿上は合ってるけど怪し過ぎるわ」

百合子が注目したのは経理で、会社全体の収支はぎりぎり赤字くらいである

複数の事業に手を出してそこそこ利益は上げているが、海外事業部とリゾート開発部が会社のお荷物と言えるほどの赤字を出していた

しかも事業内容があまりパッとしない事ばかりである

他では手を出さないような開発やら事業に莫大な金を投資するのは、いささか不自然だった


「やっぱり忠夫達に事情を吐かせるか? これ以上調べるとこっちの尻尾を捕まれるぞ?」

表向きな事はある程度調べた二人だが、現状ではあまり深く調べられなかったのである

特に海外事業部とリゾート開発部は異常なほどセキュリティが固かった


「そうね…… 目的不明のままじゃ危険だし限界だわ」

南部グループと横島達がどう関わるのかわからないまま、これ以上深入りするのは危険だと百合子は思う

元々危機管理が甘い日本の会社の中では、海外事業を扱う会社はセキュリティが厳しいのが普通なのだが南部グループは特にセキュリティが厳しい

二人は現状の報告書を纏めて横島達に会いに行った



「いらっしゃいませ。 心霊相談ですか?」

事務所に来た大樹と百合子を出迎えたのはおキヌである


「あなたがおキヌちゃんね? 忠夫から聞いてるわ。 私達あなたの親になったのよ」

自分を見るなり表情が緩んだ百合子の言葉に、おキヌはキョトンとしてしまう


「えっ!? まさか……横島さんの!?」

突然の事態に驚きの声を上げたおキヌは、どうしていいかわからずオロオロしている

横島達から両親が来るとは聞いていないため、心の準備が出来てなかったのだ


「ええ、ちょっと驚かせようと思ってね」

「はあ…… あっ、どうぞ」

驚く様子に思わず笑みを浮かべる大樹と百合子を、おキヌは中へ案内していく


「ちょっと来ない間に人が増えたな~」

リビングの方に案内された二人だが、大樹は中に居る人の多さに驚きの声をあげる

老人から子供まで居るのだから、さすがの大樹と百合子も驚きを隠せないようだ


「親父とおふくろ!? なんで日本に?」

突然現れた両親に横島もまた驚きを隠せないでいた

どうやら横島は何も知らないらしい


「ルシオラさんに頼まれた調査の件で、ちょっと気になった事があってね。 それに新しく出来た娘にも会ってなかったし、ちょうどいいから帰国したんだよ」

久しぶりの息子に笑顔で話す百合子だが、横島は調査の言葉に若干表情が曇る


(南部グループの件か……)

ルシオラが百合子達に頼むとすれば、南部グループの件以外は考えられなかった

大樹と百合子の性格上、関わらせればしゃしゃり出てくるのはわかっている横島は内心ため息をはく


(事態が切羽してるし仕方ないか……)

あまり両親を巻き込みたくない横島だが、それはルシオラも同じである

しかし現状ではそれ以上に南部グループの件が深刻だった


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