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幻の初恋

その頃妙神山では…


気持ちのいい青空の下で小竜姫が洗濯物を干していた

ニコニコと機嫌が良く、時には鼻歌交じりな彼女はとても武神には見えない

嬉しそうに横島のシャツを干す姿は、まるで若奥様のようである


同時刻、ヒャクメは得意の覗きの能力を使って横島の学校生活を見ていた


「机妖怪の愛子ちゃん、やっぱり危険度Aなのね~」

どうやら横島の周辺人物の好感度&危険度調査をしているようだ


「小竜姫も心配症なのね~ わざわざ横島さんの学校生活まで調べさせるなんて」

お菓子を頬張りながらパソコンにデータを打ち込むヒャクメ

好感度や危険度は、この数日で数人の名前が乗っている

特別仲がいい訳では無いクラスメートの女子も、意外と好感度が高い人が数人おり、横島は自分で言うよりは遥かにモテているようだ


「横島の様子はどうでちゅか?」

ほうきを片手に持ったパピリオがヒャクメのパソコンを覗き込む


「結構モテてるのね~ 横島さんはもう少し周りを見たら、もっと早く彼女が出来たのに」

ヒャクメは不器用な横島に苦笑いを浮かべていた


「そうでちゅね… でも、そうだったらパピやルシオラちゃんは横島に会えなかったでちゅ。 それは嫌でちゅよ」

パピリオは少し複雑な表情を浮かべる

横島に会わなかった未来などパピリオには想像も出来なかった


「うーん、それは私や小竜姫も同じなのね。 横島さんに会え無かった未来は考えたくないのね」

ヒャクメは少し考えてふと思う

横島の周りには笑顔が溢れている

そして心が読める自分も受け入れられているのは、少なからず横島の存在が大きい

横島と出会わない未来はあまり想像したくなかった



「パピリオ! 何処です? サボってないで掃除しなさい!」

遠くで小竜姫の叫ぶ声が聞こえる


「ヤバいでちゅ!」

パピリオはパタパタと始まって掃除に戻っていく


「ふふふ… 小竜姫も毎日幸せそうなのね」

いつもの平和な日々にヒャクメは笑みを浮かべていた



一方、真面目に授業に出席する横島だが、今まで散々休んでばかりなのだから授業内容など分かるはずがない


半分聞き流しながら窓から街の景色を眺めていた


「ほら、横島君! ちゃんと授業を聞かないと卒業出来ないわよ?」

そんな横島に甲斐甲斐しく勉強を教えるのは、もちろん愛子である

彼女の最も得意な分野であり、ここで関係を進展させなければと、彼女も気合いが入っていた


(小竜姫様って人のことは後で調べるとして、私はここで横島君にアピールしないとね~)

愛子はそう考えつつ、横島に授業内容を分かりやすく説明していく

青春妖怪な彼女の作戦は、やはり青春を感じるのがポイントらしい


「どうでもいいが、お前も本当に教えるのが好きだな~」

愛子の気持ちなど全く気が付いてない横島は、愛子が人に教えるのが好きだと思ってる


(((鈍感!!)))


ピートやタイガーなど一部の鈍感組を除いたクラスメートは、一斉に横島に白い視線を浴びせる


愛子の行動が横島にだけ違うのは、クラスメートみんなが知る事実のようだ


「横島…、お前少し周りを見ろ」

教師はため息混じりに横島に告げるが…

横島は周りをキョロキョロして不思議そうに首を傾げる


「こりゃダメだな…」

呆れた教師は横島を無視して授業に戻る


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