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あの素晴らしい日々をもう一度

「ピートさんの怪我はどうですか?」

その後控え室を後にした小竜姫と横島は医務室に向かうとそこには唐巣・令子・エミに加えおキヌやタイガーも揃っているが、唐巣達は険しい表情で重苦しい空気である。


「命に別状はないのですが、どうも反則があったようでして…」

そのあまりの空気に横島はビビりながら気配を消そうとするが、小竜姫は唐巣の説明を聴きながらもピートの元まで歩み寄ると竜気によるヒーリングでピートの怪我を一瞬にして回復させてしまう。


「うっ!? ここは医務室? それじゃ僕は…」

「大丈夫ですか? 少し厳しいことを言うようですが、ピートさんは今回試合に集中し過ぎましたね。 それは決して悪いことではないのですが、少々状況判断が甘いように見えます。 いついかなる場合においても状況判断の甘さは致命的ですよ。 あのメドーサが黙ってルールを守ると考えるのは間違いですよ。」

重症だったピートが一瞬にして回復したことに唐巣達は驚きながらも安堵の表情を見せるが、小竜姫はそのままピートに駄目だしというか注意をし始める。


「そうそう唐巣さん。 伊達選手は試験後に私が預かることにしましたので、協会の方へ根回しお願いします。」

「伊達雪之丞を説得したの!?」

「まあ、そうですね。 ただし試合はまだ止めませんよ。 下手に止めるとメドーサが暴れますからね。 メドーサの相手は私がしますが、鎌田勘九郎が少々厄介ですから。 美神さんでも試合形式だと少し不利です。」

小竜姫の指摘にピートは悔しそうに自身の甘さを反省するが、そのまま小竜姫は雪之丞を預かると言うと令子が驚き口を開く。

しかし小竜姫は今回は中途半端に試合を止める気は今のところなく、可能ならば普通に試合を終わらせてメドーサには静かに帰って欲しいのだ。

どのみち壊滅状態の白龍会の勘九郎と陰念にGS免許が与えられることはないし、今の小竜姫ならばメドーサに勝てる自信はあるがそれでも人間が多い室内で戦うのは少々厳しい。

そして何よりここでメドーサを討つと歴史が大きく変わってしまうのだから、正直なところ小竜姫にはメドーサと戦う理由がなかった。


「ちょっと待って! あいつそんなヤバいの?」

「彼の実力だと魔装術はほぼ完璧でしょう。 他の二人は未熟でしたが、そもそも本来の魔装術は肉体の枷を超える為に一時的に霊体で肉体を完全に覆う術なんです。 恐らく勘九郎は人の限界を超えてるでしょう。 流石の美神さんも武器一つで勘九郎に勝つのは難しいかと。」

一方の令子達は小竜姫が語る勘九郎の危険さに表情を強張らせていた。

未来の令子達もそうだったが、この時代の令子達も勘九郎を甘く見ていたようだ。


「どうすんのよ。 そんなヤバい相手に」

「今回はメドーサ共々逃がした方が無難でしょうね。 伊達さんは別にして鎌田勘九郎ともう一人をGS協会から追放出来れば、こちらの目的は最低限果たせますから。 正直私も大勢の人間を守りながらメドーサと戦うのは厳しいですしね。」

メドーサだけでも厳しいのに勘九郎もまだ健在なことで令子達の表情は更に険しくなるが、小竜姫は勘九郎とメドーサは逃がした方がいいと簡単に口にする。

それは以前からは考えられないほど柔軟な思考の小竜姫であり、令子と唐巣はそちらにも驚き思わず顔を見合わせた。


「どこぞの上級魔族の使い魔に一々神経質になってたらきりがありませんよ。 今回は向こうも決着を付けに来たのではないでしょうしね。 とりあえず試合は美神さんか横島さんが勘九郎と戦うまではそのまま進めましょう」

結局小竜姫の作戦により事態は出来る限り穏便に進めることになるが、唐巣や令子は改めて小竜姫に何があったのかと悩むことになる。

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