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真の歴史へ・その二

「何故と言われましても……、家族のようなものですよ」

半信半疑で伺うような石神に、小竜姫は信頼の笑顔を浮かべて答えていた


(ルシオラさんとタマモちゃんは、私にとっては家族以上ですが……)

思わず出そうになった本音を小竜姫は静かに飲み込む

もちろん老師やヒャクメや愛子なども大切な仲間だが、小竜姫にとってルシオラとタマモは特別である

ルシオラとタマモの二人は、運命共同体と言ってもいい存在だった

横島を加えた四人は微妙なバランスの上に成り立っており、仮に誰か一人でも欠けたら自分達は生き残れなかった確信があるのだ


「家族ね……」

石神は小竜姫の言葉に、それ以上詳しく聞けなかった

何か理由があるのは察しているが、小竜姫と老師は明らかに高位の神族である

いくら力を隠しても、その圧倒的存在感から並の人界に住む神族でないのは明らかだった


「なるほどね、おキヌと小鳩が妙に手慣れてる訳だ」

「今回の件に私達は口出ししてませんよ。 二人が自ら考えた行動です」

最下級とはいえ神族の自分への対応や説得のやり方が、妙に慣れていると前から不思議に思っていた石神は小竜姫達の入れ知恵だと思ったようだが、そんな石神の言葉を小竜姫は即座に否定する


(結局、自ら考えるだけの知恵を付けたのはあんた達だろ)

今回の行動に関しては口出ししなくても、二人がかなり小竜姫達の影響を受けているのは明らかだと石神は思う


(クスクス…… 困った人なのねー)

石神の考えを覗いていたヒャクメは思わず笑ってしまいそうになる

老師や小竜姫の神格を感じてもなお態度が変わらないのは、ある意味凄いことだった

いくら立場が違うとはいえ、神族もまた力が物を言うのである

まあ、それだけ石神が変わった神族なのだろう


そんなイマイチ納得がいかない様子の石神だったが、それとは別に目の前の光景が不思議なようだった

神族も魔族も妖怪も人も幽霊も関係無く賑やかに騒ぐ事など、絶対有り得ないと言い切れる事なのだから

その絶対有り得ない事の中心には、確実におキヌも加わっている

特に浮遊霊からの信頼は石神から見ても凄いものだった



それから数時間後……

散々騒いだ浮遊霊達は深夜の街に帰って行き、石神もまた帰ろうとしていた


「あんた達が何を目指してるのか少しわかったよ。 少なくともあんた達の夢を邪魔するのはやめるよ」

見送りに出たおキヌと小鳩に、石神は初めて柔らかな笑顔を見せていた

二人は石神のそんな言葉に、嬉しそうな笑顔を浮かべて喜びあう


「ありがとうございます」

「別に浮遊霊を認めた訳じゃないよ。 ただあんた達の将来が見てみたくなっただけさ」

何度も頭を下げる二人に、石神はそう言い残して帰っていく



「浮遊霊を助ける霊能者と、貧乏神を家族だと言う霊能者か……」

帰り道で面白そうに笑う石神は、二人の将来を想像してつぶやいていた

今までに無い新しい霊能者になるかと思うと、将来が楽しみなようだ


「まあ、今回はあの連中に賭けてみるか……」

浮遊霊を排除しなくても、悪霊やタチの悪い妖怪は来ないだろうと石神は確信している

それだけ横島の事務所に居るメンバーは強すぎるのだ



そんな訳で最終的には小竜姫達の存在感にも助けられたおキヌと小鳩だが、石神の説得に無事成功して初仕事を解決していた


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