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幻の初恋

(ちょ…ちょっと! どっちか助けなさいよ!)

令子は藁にもすがる思いで、頭の中に聞こえた声に文句をつける

もはや声の主が誰だとか、何故声が聞こえたとかは頭に無い


『そんなことを言われましても… あなた日頃、神を敬いもしないじゃないですか?』

神々しい声は冷静に正論を述べる


『そやそや、魔王も恐れないやろ? アシュの野郎に言ったそうやないか~ 困った時だけ頼るなんて、虫が良すぎると想わへんか?』

関西弁の声は微妙に笑いをこらえてるようだが、混乱している令子は気が付かない


「もういいわよ! ケチ! あんた達なんかに祈った私が馬鹿だったわ!!」


「美神さん? 私を無視して誰と話してるんですか……」

どうやら令子は頭の中の会話のはずが、声にだしていたらしい

おキヌは自分を無視する令子に、少し不機嫌そえに微笑む


『頑張ってな~ わいらは見てるさかいに』

『あなたにだけは、ケチと言われたくないです』

微妙に楽しそうな関西弁の声と、ケチと言われて少しムッとした神々しい声であった



ピュルリリリリ~


突然笛の音が聞こえた


「ヒィィィーーー」

悲鳴をあげたのは令子である

彼女の周りにはたくさんの悪霊が現れ、彼女の周りを取り囲む


「みかみさん… わたしをむしするなんてわるいこですね…」

クスクス…

ゴゴゴゴゴーー


おキヌは無視された令子を教育するべく行動を開始する



この後…、令子はこの世で最も恐ろしい体験していく

そのあまりの恐ろしさに、令子の性格は変わってしまうことになる


そしてこの日を境に、美神事務所のボスは実質上変わることになる



美神事務所がそんな事態だとは知る由もない妙神山では、相変わらずな夜を過ごしていた


「横島ー! 一緒にお風呂に入るでちゅ!!」

夕食後のんびりしていた横島をパピリオが引っ張って行こうとする


「そうだな… たまには…『ダメです!!!』…」

横島が立ち上がり返事をしようとするが、それを遮るように小竜姫の声が響く


「小竜姫様?」

横島は突然大声を出した小竜姫を不思議そうに見つめる


「なんでダメなんでちゅか? 前も一緒に入ったでちゅよ?」

パピリオは不満そうに頬を膨らませ小竜姫を睨む


「ダメと言ったら…ダメです!!」

絶対に許さない

そんな小竜姫の強い決意が竜気となり、全身から溢れていた


「小竜姫様、落ち着いて下さいよ。 何でダメなんすか?」

横島はパピリオと小竜姫の間に入り、落ち着かせるように話しかける


「えっ… それはその……」

小竜姫は顔を真っ赤にしてモジモジし始めた


(言えないわ! 羨ましいだなんて!! 横島さんが他の人とお風呂に入るのが嫌だなんて!)

小竜姫はどうやって言い訳しようか考え込む


「小竜姫はパピリオにやき……アウッ!?」

いつものように余計な事を口走ったヒャクメは、小竜姫の超加速により撃沈


「文句がありますか…?」

神剣をキラリと光らせて小竜姫はパピリオを見つめる


「わかったでちゅ… パピは小竜姫の言うこと聞くでちゅ」

横島の後ろに隠れたパピリオは、小竜姫の迫力に完敗であった

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