このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

梅雨の終わり

その後帰宅した魔鈴は百合子から六道女学院の特別講師の件を聞くが、正直困惑気味だった

単純に若い霊能者に経験談を話すだけならば構わないが、技術的な講義などは秘匿するべき技術も多い上、専門的なため六道女学院の生徒では難しい

それに加え考えなくてはダメなのが魔鈴の業界内での立場である

元々現代で唯一の魔女として評価が高い一方で、業界関係者ですら胡散臭い者として扱う関係者も多い

魔鈴が詳しい技術や成果を公表してない事もあり、魔族との契約や人には言えない方法で魔法を復活させてるのではという疑惑もあるのだ

まあこのような疑惑や陰口は、一流のGSや霊能者であれば多かれ少なかれあるのが普通なので魔鈴に限った事ではない

令子やエミも当然疑惑や陰口は叩かれてるし、唐巣ですら無理をしすぎてる生活が陰口になってる事もある


問題は雪之丞の試験合格以降、魔鈴には業界内で過度な注目や期待が集まってる事だった

令子のように噂が噂を呼ぶほどではないが、実力以上の期待はあまり嬉しい事ではない

除霊は本業ではないし、GSとして過度な期待を持たれても困るのだ


「一度お話を聞いてみる必要はありますね」

少し迷った魔鈴だが、詳しい話を聞く価値はあると感じている

教えられる事は少ないが、自分の経験や知識の一部が若い霊能者の役に立つのはいい事だと思う

横島や雪之丞を見ているだけに、若い霊能者が道を間違わないように少しでも手助けが出来るならば、魔鈴にとっては嬉しい事だった



そして次の日、六道家には検査入院から退院した唐巣が尋ねていた


「役員就任お受けします。 ただ少しお願いがあります。 一つは今回の件での横島君達への借りを、私に代わりに言って下さい」

さっそく昨日の返事をする唐巣だが、条件として横島達への借りを自分が返す事を頼む


「貴方までそんな小さな事を言うなんて悲しいわ~ 私はそんなつもりじゃないのに~」

「いや、しかし……」

ため息と共に悲しそうな表情をする冥菜に、唐巣は困った表情を浮かべていた

冥菜がそれほど無理難題を横島達に言うのは考えられないが、唐巣としては自分の為に横島達が借りを作ったのだけは帳消しにしたい


「唐巣君~、私は冥子の友達に貸しなんか作らないわ~」

それは冥菜の親としての顔だった

六道の家やオカルト業界も関係ない、六道冥菜の親としての顔である

冥菜が以前から令子に目をかけて来た理由の一つも、冥子の友人だからだった

まあ令子と六道家は互いにいい利益をもたらす関係でもある為その他も複雑だが、それとは別に冥子の友人としての扱いもあるのだ


現在の冥菜の横島達への対応は、冥子の友人としての対応のみである

六道の名前を気にせず、なおかつ小竜姫の庇護の元でオカルト業界の影響が届かない横島の存在は、冥子の友人としては欠かせないと考えていた

将来的に冥菜が亡くなった後などで冥子が危機に陥った時に、何のしがらみもなく手を差し延べる友人は限られている

冥菜はそんな存在を何より大切に考えていた

六道の家や業界の未来も大切だが、やはり自分の娘の将来が一番心配なのである


33/42ページ
スキ