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梅雨の終わり

「謝礼の話は忘れていいわ~ 唐巣君の問題は私も頭痛の種だったもの~ ただね……」

(やっぱり何かあるわよね)

謝礼を拒否する冥菜だが、やはりタダでは終わらない事に百合子は内心警戒を強める


「魔鈴ちゃんにウチの高校の特別講師を頼めないかしら~」

冥菜の意外な頼みに、百合子は若干驚きの表情を浮かべてしまう

正直、冥菜が頼むには普通過ぎるのだ


(何が狙いなの? まさか忠夫達を取り込むつもりじゃ……)

「心配しなくても横島達には手を出さないわ~ これには理由があるの~」

百合子の警戒をよそに、冥菜は事情を話していく

その理由とは以前に書いた、六道女学院の2~3年の無気力化だった

無気力化に伴い霊や妖怪などを、一般人と同じように怖がる者も多い

しかしオカルト業界の未来を担う六道女学院の生徒が、無気力化したり霊や妖怪を怖がるのではマズイのである


「六道女学院の特別講師は、私の一門じゃない方にもお願いしてるわ~ 私はよりたくさんの霊能者を生徒達に知ってほしいの~」

言葉の通り六道女学院には、六道家と関係の薄い中立的な霊能者も複数居る

冥菜は魔鈴にも特別講師に加わって欲しかったのだ


「何故、彼女なんです?」

性分からかどうしても疑ってかかる百合子に、冥菜は少し困った表情を浮かべる


「うちの生徒達は、令子ちゃんへの人気が高すぎるの~ 悪い事ではないけど~、もう少しいろいろ知って欲しいのよ~」

特別講師と言えば一番人気はやはり令子だった

オーソドックスな除霊スタイルだし、人気と実力も兼ね備えてるため文句はないのだが……

問題は令子に憧れる生徒は、力を重要視し過ぎる事である

かつて弓かおりが『GSは実力が全て』と言ったが、六道女学院の令子の信奉者には特にその感じが強い

まあ実力は必要だが、力に訴える以前に霊や妖怪を慈しむ心など必要な事が多々ある

しかし当の令子にその気持ちが少ない為、必然的に生徒達も令子のようなGSになりたいと考えてしまうのだ

何事にもバランスは必要であり、令子とは対照的なGSとして魔鈴の名前が候補に上がっていたのである

アシュタロス戦にも参加して知名度や実績は十分な上、先日のGS試験で雪之丞が首席合格した事から、最近魔鈴が注目を集めてる事も理由にあった

まあ早い話が令子と対極的なGSで、最近一番人気があるのが魔鈴だったという事である

冥菜としては令子は令子で評価しているが、あのタイプがGS界の主流になられても困ると考えていた

ちなみに唐巣やエミも特別講師をしているが、唐巣は人格や除霊に関して尊敬はされるが行き過ぎた貧乏により人気が無い

エミは令子には劣るが人気もあり生徒達の反応は上々なのだが、令子と比べられるのが嫌でアシュタロス戦後は特別講師を断っていたのである


基本的に特別講師は技術よりも、心構えや大まかなGSの形を生徒達に学ばせる意味合いが強い

要は憧れや理想の形として生徒に見せたいのである



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