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梅雨の終わり

その頃、横島は一人で異界のどんよりした空を見上げていた


(なんであんな生き方するんだろ?)

自分の人生を他人に捧げて生きる唐巣が、横島には全くわからない

かつて令子は馬鹿がつくほどお人よしだと唐巣の事を言っていたが、何が唐巣をそこまでさせるのか今だに理解出来ないのだ

人を助ける事自体は必要な事だろうが、助けられた側が唐巣に甘え過ぎてる気もする

心に人間不信を抱える横島には、理解出来ない事ばかりだった



それから二日後、唐巣の病室を珍しい人が尋ねていた


「また倒れたんですって~ 相変わらずね~」

いつものようにのんびりした口調で話しているのは、六道冥菜である

果物のカゴを持ってきた事からお見舞いに来たらしい


「わざわざお越しいただくとは……、ありがとうございます」

この二日でだいぶ顔色も良くなった唐巣は、早く退院したくてウズウズしてる感じである

そんな唐巣も、冥菜がわざわざお見舞いに来た事は驚きが隠せない


「唐巣君~、もう若くないんだから無理しちゃダメよ~」

「面目ない……」
 
無理するなと言う冥菜に、唐巣は苦笑いを浮かべるしか出来ない


「しかし何故、私が倒れた事を知ってるのですか? 美神君にすら言ってないのに……」

「うふふ、六道家が知らない事なんてないのよ~」

ちょくちょく倒れる唐巣のお見舞いに冥菜が来るのはたまにあるが、今回は令子にも知らせてない上に少し来るのが早い

唐巣は他に用件でもあるのかと感じていた

意味深な笑みを浮かべたままの冥菜は、封筒に入った一枚の書類を唐巣に手渡す

嫌な予感がする唐巣は恐る恐る封筒をあけると、思わず目を見開いて驚く


「これは……」

「ええ、昨日開かれたGS協会の臨時役員会で、唐巣君に役員に就任してもらう事が全会一致で決まったわ~」

冥菜が持って来たのは、唐巣のGS協会役員への就任要請書だったのだ

戸惑い困った様子の唐巣を、冥菜は面白そうに見つめている


「ちょっと待って下さい! 私は以前にもお断りしたはずですが!?」

以前から何度かGS協会役員への誘いがあった唐巣だが、全て断っている

人の上に立つのは自分の器ではないといい、一人のGSとして生きたいという唐巣の強い想いがあったのだ


「でも~、もう決まっちゃったの。 役員になってちょうだいね~」

ニコニコと役員を強制しようとする冥菜に、唐巣は引き攣った表情でどう回避しようか思案を巡らせていく


「何故ですか? 私は六道家にもGS協会にも協力はして来ました。 私の想いは理解して頂いてたはず……」

唐巣は今まで六道家やGS協会に協力してきた過去がある

一般社会とオカルト業界の壁を少なくしようとする六道家やGS協会には、十分協力してきたのだ

その上で今までは唐巣が一人のGSとして弱者を救いたいという想いを、冥菜もGS協会も理解していたはずだった


「今の活動を辞めろとは言わないわ~ でも、もう少し未来を考えてちょうだい。 貴方のようなGSを失う訳にはいかないの~」

突然の方針変更に戸惑い食い下がる唐巣に、冥菜は少し真剣な表情で理由を語り初める
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