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梅雨の終わり

たいした事はしないだろうと予想していた鬼道だが、これは予想以上だった


「あんちゃんもこっちでお茶飲まないか?」

少し戸惑う鬼道もまた、老人達に言われるままに座るように促されてお茶を出される

これではボランティアと言うより、祖父母に会いに来た孫という感じだった


(理事長……、これはちょっと甘やかし過ぎとちゃうか?)

鬼道の思いをよそに老人達と冥子は楽しそうにおしゃべりをしていく

内容が噛み合ってない時もよくあるが、それでも本人達は気にせず楽しそうである

ショウトラはせっせとヒーリングをしていくが、冥子が一切説明もしないために最後まで犬として受け取られていた



「お母様、楽しかったわ~ 冥子また行きたいな~」

その日の夕方、帰宅した冥子はご機嫌な様子で冥菜にボランティアの結果を報告する

その冥子の様子に冥菜はホッとしたが、次回はまた依頼があればとごまかす

先方の話も聞かねばならないし、何より冥子が本当にボランティアを出来ていたのか検証する必要はあるのだ


「冥子~、なんでボランティアに興味を持ったの?」

「横島君が~ 冥子にはボランティアがいいんじゃないかって、進めてくれたの~」

話も終わり頃、そもそも冥子に何故ボランティアに興味を持ったかと聞けば、その答えは予想もしないものだった


(横島君がね~)

予想もしないとこで出て来た横島の名前に冥菜は、驚きと共にその意図を考え始める

冥子が令子の事務所以外にも魔鈴の店によく行っているのは知っているし、その件に関しては冥菜も口を出してない

基本的に冥子の周りには気をつけてはいるが、令子や横島達に対しては関与してなかった

冥子にも友人は必要だろうし、六道の名を気にしない友人を作るのは難しい

令子の場合は多少の打算が絡むが、それを考慮しても冥子を友人として考えているのは明らかなのだ


(今の横島君は、よくわからないのよね~)

冥菜自身、現在の横島を計りかねている

百合子や小竜姫などの周りは過剰なほど横島を守る立場をとっているが、本人の明確な意思はGSを辞めた件と魔鈴と付き合った件以外は表に出て来ない


(一度会ってみたいのよね~)

それは冥菜が以前から考えていた事だった

美神親子を振り切り己の道を進み出した横島に、冥菜は以前から会ってみたかったのである


(無理よね~ 私から会いに行くと余計な波風が立つし~)

以前から横島に会ってみたいと考えていた冥菜が、今だに何もしてないのには訳がある

冥菜は横島に会ってはみたいが、実はそれ以上何も望んでないのだ

静かに暮らして冥子の友人として居てくれるだけで満足なのである

下手に横島に会いに行って周りを刺激したら、望まぬ争いや対立になる可能性も否定できない

冥菜としてもそんな展開はゴメンだった


かつての横島を知るだけに今の横島に会ってみたいだけなのだが、それを周りが信じてくれる立場ではない


(なんで私がちょっと動くだけで、みんな勝手な憶測するのかしら~)

自分の立場に冥菜は思わずため息をはきたくなる

冥菜とて、いつも何か目的があって動いてる訳ではない

それなのに何かするたびに勝手な憶測をされる事に、本人は決していい気持ちをしてなかった


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