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梅雨の終わり

同じ頃横島達は店の客が途切れた合間に、旅行雑誌を片手に夏にパピリオ達を何処に連れていくか相談していた


「夏と言えば、やっぱり海だろ? キャンプとかどうだ?」

夏と言えば海と単純に考える横島は、どっかでキャンプでもしたいと考えていたようである


「しかし天竜童子殿下がいらっしゃるのですから、キャンプではちょっとまずいんじゃないですか?」

簡単に考えてる横島とは対照的に魔鈴は天竜の扱いについて困っていた

小竜姫には特別扱いは無用だと言われたが、常識的に考えてただの子供として扱う訳にもいかずに対応に悩んでいる

特別扱いはダメだが、最低限お忍びで来た神族としては扱わねばならない為余計に扱いが難しい


「大丈夫ですって、あいつただの子供と同じっすから。 要は遊びたいだけなんですよ」

魔鈴の悩みなど全く理解してない横島は、知り合いの子供と同じ感覚で考えている

妙神山から帰って来た後、魔鈴が天竜が来るかもしれない事を相談した時も横島はあっさりと承諾していた

まあ魔鈴も予想していたとはいえ、相変わらずの横島の価値観に思わず苦笑いを浮かべていたのは仕方ないだろう


「本当に大丈夫なの? 神族にとって魔族は天敵なのよ? みんなが横島のような価値観じゃないのよ?」

考えてるのか考えてないのかよくわからない横島に、タマモはちょっとキツイ口調で問いただす

仮に表向き友好的な態度でも、ちょっとした事をきっかけに険悪になるなんて事も有り得なくはない

イマイチ掴めない横島の考えに、魔鈴達は不安を抱えてている


「大丈夫だって、天竜には会った事あるしな。 あいつは話せばわかるよ」

少し不安そうな魔鈴達三人に、横島は相変わらず簡単に言い切ってしまう


(何も考えてないように見えて結構考えてますからね。 自信はあるのでしょうが……)

横島が何も考えないで大丈夫だと言わないだろう事は、魔鈴達も理解している

タマモ達の未来に留まらず愛子やピートの未来まで考えていた横島なのだから、ある程度考えがあるのはわかっていた

ただ問題なのは、相変わらず細かい事を話さない横島の態度が問題なのだ


「先生、ちゃんと理由を説明して下され」

困った表情の魔鈴とタマモが無言で考え込む中、横島を一番信頼しているシロは信頼しているからこそ素直に理由を尋ねていた

「理由か~ あいつさ、自分を誘拐しようとした奴を簡単に許して家来にした事あるんだよ」

シロの真剣な表情に、横島は少し考えて理由を語っていく

元々感性で決断する横島に明確な理由があった訳ではないが、よく考えてみるとそんな言葉が出てくる

ただのプライドが高いだけの神族とか魔族を憎む神族でないのは、イームとヤームの件でわかるのだ

騙されていたとはいえ、自分を誘拐して殺す片棒を担いだ相手を許して家来にするなど普通は出来ないだろう

まあ横島はシロに改めて理由を聞かれなければ、そこまで理由を考えなかったかもしれないが

しかし、横島が天竜を信じる根底がその件にある事は確かである


「だからさ、きっとわかってくれると思う。 なんとなくそんな気がするんだ」

理由が後づけのような感じだが、横島は半ば確信したように言い切っていた


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