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あの素晴らしい日々をもう一度

「ああ、先生。 出来ればピートの試合は隠れてみてね。 ちょっとピートに気合いいれたから」

そのまま小竜姫は横島と唐巣と共に試合会場に向かうが、途中で唐巣を探してミカ・レイ姿の令子が現れる。

彼女は意味ありげな笑顔で唐巣にピートの試合を隠れて観戦するように告げるが、唐巣は今度は何をしたんだと少し不安そうな表情だ。


「最低一人は捕まえないとまずいでしょ。 陰念に逃げられちゃったし、次のあいつを捕まえてさっさと終わらせましょう」

どうやら陰念に逃げられた令子は、雪之丞を捕らえることにしたらしい。

割と単純そうだし適当に騙して雪之丞から証言を得て、この一件をさっさと終わらせたいようだ。


「君ねえ……」

やはり令子は未来の歴史と同じく唐巣が白龍会の手の者に襲われ重体だと嘘をついたらしい。

ただ唐巣はピートに気合いを入れるのはいいが、冷静さまで失わせて大丈夫なのかと不安だったが。


「ピートさんにはいい薬かも知れませんね」

令子の過激な発破に唐巣は複雑そうだが、小竜姫は歴史通りに雪之丞が裏切る流れであることに内心ホッとしていた。

まあ雪之丞の性格から考えるとGS試験でメドーサと決別しなくても、近いうちにメドーサの元から逃げ出すのは見えているが次の試合はピートにとってもいい薬だと小竜姫は考えている。


「そんな小竜姫様まで……」

「彼は少し勘違いをしてるようですから。 この世界において神族が絶対正義でも無ければ、魔族が絶対悪でもないのですよ。 所詮は神魔は役割が違うだけの同じ存在なのですから」

結局小竜姫までもが過激な発破に肯定的なことで唐巣は困った表情になるが、そのまま語る小竜姫の言葉には令子共々凍りついてしまう。

あの小竜姫が神族を否定したとも受け取られ兼ねないことを言うとは、令子も唐巣も思いもしなかったのだから。


「どういう意味っすか?」

「神族も間違うことが割とよくあるということですよ。 全知全能な神族など現実には存在しませんから」

その言葉をどう受け取るべきかと悩み固まる令子と唐巣と対称的に、話に全く着いていけてない横島は素直に小竜姫に意味を尋ねていた。

そんな空気が読めない横島に令子と唐巣は一瞬ギョッとなるが、小竜姫は少し楽しそうに横島の為にかなりかみ砕いて教える。


「へ~、そうなんっすか」

「ピートさんは吸血鬼としての自分を素直に受け入れる必要があるんですよ。 どうも吸血鬼にコンプレックスがあるようですが、彼の魂の半分は吸血鬼なのですから」

「いや吸血鬼にってより、親父のコンプレックスじゃないっすか? 恥ずかしい親父でしたからね」

「あら、そうなんですか?」

相変わらず様子が変な小竜姫に令子と唐巣の師弟は顔を見合わせ困った表情になるが、当の小竜姫と横島はすでにピートの欠点の話で盛り上がっていた。

実は小竜姫はピートが吸血鬼にコンプレックスがあるとばかり思っていたが、過去の事件の話を横島から聞くと横島の語るように父親へのコンプレックスもあるのかもしれないと思う。

そのまま興味津々な様子でピートの父親であるブラドー伯爵のことを聞く小竜姫の姿はやはり神族には見えなかった。



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