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麻帆良祭への道

「……ありがとうございます……」

突然の事態にポカーンとしてしまった千鶴は、一瞬何が起きたのか理解出来ないようだった

それもそのはずで横島は千鶴から少しだけ離れた場所に居たはずなのだ

目を閉じてしまった為に見てなかったが、そんなに近くに居たかとふと疑問を感じていたのである


「本当に大丈夫か?」

驚きのあまり固まる千鶴を横島は少し心配そうに見ているのだが、横島の両手は今だに千鶴の腕を掴んだままであり見る人が見たらキスでもするのかと誤解されそうな体勢だった

まあ横島の配慮から抱き着くような形にはならなかったものの、倒れそうだった体を支えるにはそれなりの場所を受け止める必要があったのだ

流石に抱き着く形や腰などを受け止めるとセクハラになるかと考えて腕を掴んで受け止めたらしい


「はい、大丈夫です。 ありがとうございました」

「気をつけなきゃダメだぞ」

千鶴が落ち着きを取り戻したのはそれからすぐだった

当然の事態に胸の鼓動が高鳴るのを抑えつつ、冷静さを取り戻した千鶴はいつもの笑顔を見せる

そのまま千鶴が大丈夫なのを確認した横島は送る為に仮設店舗から出ていくのだが、入口を出た横島と千鶴は偶然超と葉加瀬の二人とばったり会ってしまう


「どうやら邪魔だったようネ。 私達は出直すヨ」

「大丈夫ですよ。 お二人が一緒だったことは誰にも言いませんから」

入口でばったり会った超と葉加瀬は横島と千鶴が一緒に居るのを見て驚きの表情を見せるが、そのまま勝手に気を効かせるような笑顔で去って行こうとする


「変な気を効かせて妙な噂を流すのは勘弁してくれ。 俺はともかく千鶴ちゃんが迷惑するだろうが」

「あら私なら全然迷惑ではありませんよ。 先程のことは嬉しかったですし」

超と葉加瀬が意味深な笑顔で見つめる中で横島は変な噂でも流されたら千鶴が困るだろうと早々に否定するが、なんとその千鶴が逆に意味深な言葉を口にしていた


「やはり手が早いとの噂は本当だったネ」

「結構いろいろな人と噂になりましたもんね」

千鶴の言葉に超と葉加瀬はまるで横島が千鶴を口説いたかのごとく話をするが、当の千鶴はいつもと同じ笑顔のまま何故か否定も肯定もしない


「噂って、お前ら…… 本当にモテるならいいが、実際にモテないのに噂になっても全然嬉しくないわ」

「では木乃香サンとこの辺りでデートしてたのも嘘なのかナ? アトラクションを完全攻略したと聞いたヨ」

最近いろいろ勝手な噂されてる横島は若干苦笑いを浮かべて真実ではないと断言するが、超は何故か以前に横島が木乃香と一緒に居た件を知っていたようでその件を持ち出す


「一緒に行ったのは本当だがデートじゃないぞ。 この店舗を最初に見に来た後にこの辺りを回っただけだからな」

「それはデートだと思うわ」

「千鶴ちゃん…… というかなんで俺の味方が居ないんだ? それに俺は千鶴ちゃんと噂されても一向に構わないのになんで否定せにゃならんのだ?」

木乃香との件を説明する横島だったが、いつの間にか千鶴が味方でなくなってることにグッタリしてしまう

正直横島は千鶴の為に説明してるのに、何故か千鶴が火に油を注ぐような立場なのだからグッタリするのは仕方ないのかもしれない



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