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二年目の春・10

一方刀子はあまりいい目覚めではなかった。

何かいろいろ夢を見て疲れたような目覚めだった。

何かあるとは思っていたが予想以上であり、あまりに常識離れな過去にどう受け止めるべきか悩んでいる。


「世界を自由にしてる時点で想定するべきだったわね。」

日頃の横島を見てるとどうしても実感が湧かないが、異空間アジトという一つの世界を自由にしてる時点で世界の根源に関わるほどの過去を想定してなかった自分にため息が出てしまう。

過去は決して軽くはない。

それは歳を重ねるに従って理解することになる。

無論個人差はあるが、それなりの年齢になると十代より過去は軽くなることはない。

ただここで重要なのは横島は自分達に何か多くを求めている訳ではないことか。

今までと変わらぬ関係を望む以上出来ることはあまりない。


「モテないね。」

それと少しだけ見た横島と小竜姫の手合わせも、刀子にとっては衝撃は大きかった。

技術や力量ではない。

剣を交えることで互いに語り合い、まるで愛を育むように見えたのは偶然にはあまり思えなかった。

深い男女の関係ではないとはいうが、精神的な強い絆は並の恋人や夫婦よりあるかもしれない。

更に刀子は感じた。

小竜姫のシミュレート体が自分や少女達を確かに見ていた事実に。

表情が読み取れるほどではなかったが、きっと横島が一人でなかった事に喜びを感じつつも不安を抱えていたのかと想像すると胸が痛くなる気がした。



一方高畑の目覚めもまた、あまり良くなかった。

似てるとおもった。

助けられるはずの大切な人を目の前で犠牲にして失う辛さは、理解してるつもりなのだ。

ただ同時に羨ましいとも思える。

再び会える可能性があることに。

高畑はなんとなく気付いていた。

横島が同情や共感にも似た感情を自分に向けていることが。

珍しくはない。

高畑の過去を知る者は、心を痛めてくれる人も少なからず居るのだ。


「強さと弱さか……」

横島の強さも弱さも理解する高畑は、かつて雰囲気が似てると感じたナギと横島は全く違う事を理解する。

強いてあげるとすれば奇跡を起こしたという共通点がある。

世界に運命に愛された人というのならば似てると今でも思う。


「力の到達点か。」

少なくとも横島は一度は戦う力の到達点とも言える強さを手に入れている。

高畑自身、夢に見て追い求めていたその先に到達した結末を知らされた。

強すぎる力は自分の命や世界そのものを危うくするという事実に、皮肉めいた何かを感じずには居られない。

ただ救いなのは横島自身が過去に寄り添いながらも前を向き生きていることか。

正直少女達には言わない方が良いのではと思ったが、横島にとって少女達は自分が思う以上に大きいのだろうと改めて理解していた。


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