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二年目の春・9

「お疲れさまでした!」

「終わったー!」

最後の最後まで賑わい混雑した麻帆良祭は終了した。

横島も少女達もタマモも最後までやりきった充実感と、終わってしまった寂しさに包まれていた。

昨年の王者として注目と期待を集めた3ーAだったが、終わってみればディフェンディングチャンピオンに恥じぬ出し物を見せることが出来ていた。

麻帆良祭終了の瞬間には報道部の取材クルーも来ていて、最後まで残っていたお客さんからは拍手がおこる。

累計客数は麻帆良祭の全ての出し物やイベントを含めてもトップクラスだろう。

大きな失敗や致命的なミスがなかったのは、一重にバックアップしていた雪広グループのおかげと言える。

雪広グループの物品販売ブースで販売していたわんこひつまぶし弁当は、同ブースでの販売品の中でトップの売り上げを記録していて、一口揚げパン用のパンは販売個数でトップだった。

一口揚げパン用のパンに関しては早くも関東地区限定で正式販売する予定である。


「キレイ……」

「世界樹が光ってます。」

営業を終了した店舗では、そのまま後夜祭に突入していた。

隣接する雪広グループが設置したステージや屋外テーブルなども巻き込み、協力してくれた雪広グループ社員や超包子のメンバーも集まり大宴会となる。

余った料理にあちこちから持ち込んだ料理や飲み物でばか騒ぎをしている。

そんな中、世界樹が眩しいくらい光輝いていた事に誰かが気付くと、煩いほど騒いでいた者達が静まり返るほど世界樹に見入ってしまう。

温かく柔らかな世界を包むような魔力の光に一般人は魅了され、魔法関係者は二十二年に一度の奇跡を目の当たりにしていた。


「よう。久しぶりやな。 横っち」

誰もが世界樹に見入る中、その者は平然と横島の前に姿を現した。


「……てめえ。何しに来た?」

あちこちから聞こえてくる賑やかな声と世界樹に見入る周囲から隔離されたかのように、横島はその者を見ると表情が一変する。

それは少女達が知る横島ではない。

かつて世界を終わらせた戦士としての横島だった。


「横っち?」

「お前達は下がっていろ。」

そして近くに居た少女達は横島に親しげに声を掛けたチョイ悪親父風の男に驚くが、アナスタシアは真顔でチャチャゼロを呼び出すと少女達を自分の後ろに下がらせる。

二人だけではない。

打ち上げに来ている高畑も、いつの間にか戦闘体制になって背後から援護する気でいる。


「横っちも嬢ちゃんも落ち着こうや。 ワイは娘の晴れ姿を見に来ただけや。 第一、勝敗の見えてる争いをする気はあらへん。」

「たいした自信だな。」

「ああ、戦えばワイの負けや。 そっちのワイがキーやんと二人でも横っち一人にボコボコにされたのに、嬢ちゃんまで居て勝てへんわ。 それに土偶羅には遊びに行くって連絡したはずやで。聞いてへんのか?」

「父がお世話になってます。」

一触即発の雰囲気を放つ横島にアナスタシアは合わせるように動いていたが、二人を止めたのは意外な人物だった。


「ザジさん?」

「……父?」

怪しげな関西弁の男の背後から現れたのは、横島もよく知るザジ・レイニーデイだった。


「……はあ?」

「なんや知らんかったのか? 相変わらず抜けとるな。」

男の名は数多ある。

しかし横島の世界では魔界の最高指導者と呼ばれていて、この世界では正真正銘魔族の王であった。



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