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二年目の春・9

一方午後になると麻帆良祭は、フィナーレに向けて盛り上がっていた。

パレードも三日目の午後が最後となるので、今まで以上に盛り上がり賑わっている。


「どうしたの?」

「ぐすん……ぐすん……。 お母さん……。」

横島達も最後のパレードを見物して楽しんでいたが、ふと気が付くとタマモと同い年くらいの女の子が泣きながら人混みを歩いていた。


「迷子ですね。 この混雑だと迷子センターに連れて行った方がいいでしょう。」

楽しいお祭りで泣いている子供に気付いたタマモが不思議そうに声をかけるも、女の子はお母さんを呼びながら泣くばかりだった。

小さな女の子からすると、見知らぬ人混みの中は恐怖の対象なはのだろう。

周りは見えずに人の流れに流されるように歩かざるを得ない。


「ちょっと待ってろ。」

タマモと少女達は大丈夫だからと女の子を慰めてどうしようかと相談するが、横島はその場で目を閉じると精神を集中した。

四方から聞こえてくる賑わいや人の声を聞き、一つ一つ無関係な音や声を排除していく。


「見つけた。 その子のお母さんだ。」

子供を探すお母さんの声を聞き分けると、透視で女の子のお母さんか確認して僅か数秒で見つける事が出来ていた。


「お嬢ちゃん。 お母さんのとこに行こうな。」

「ぐすん……ぐすん……。」

横島はなかなか泣き止まぬ女の子を抱き抱えてやると、少女達と一緒に女の子のお母さんの元へ移動する。


「美樹!」

「……お母さーん! うぇーん!!」

女の子のお母さんは意外と近くに居たようで、人混みの中を少し歩くとすぐに会うことが出来た。

横島はお母さんの顔を見て表情がパッと明るくなった女の子を下ろしてやると、女の子は走ってお母さんに抱きつき、また泣いてしまった。


「どうもすいません。 お世話になりました。」

「いや。 見つかって良かったっすね。」

麻帆良祭で一番多いトラブルは迷子という話もあり、横島達は女の子をお母さんの元に返せてホッとしていた。

甘えたい盛りなのだろう。

女の子はお母さんにべったりと抱きつき、もう離さないと言わんばかりだ。


「さあ、パレード見に戻ろうか」

そのまま横島達は女の子とお母さんと別れるが、少しだけ女の子が羨ましくなったようでタマモはいつの間にか明日菜の手をぎゅっと握っていた。


「タマちゃん。 ほら。よく見えるでしょ?」

母親が居ないタマモの微かな心情の変化に同じく母親が居ない明日菜はすぐに気付いたらしく、タマモを抱っこしてやると一緒にパレードを見物することにする。


「うん!」

涙は見せないが、やはり少しだけ寂しかったのだろう。

明日菜の温もりに甘えるように満面の笑みを見せると、タマモはパレードを楽しむ事が出来ていた。

横島はタマモの表情の変化に気付いたようだが、他の少女達は夕映ですら気付かぬほど僅かな出来事であった。

体力や力がある明日菜は日頃からよくタマモを抱っこしているので、周りも気付かなかったらしい。

しかしタマモと明日菜は、確かな絆で改めて結ばれていた。

それが例え血が繋がらなくても、互いに大切な存在である事に変わりはない。



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