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二年目の春・9

「全く。 桜子ちゃんには困ったもんだ。」

結局お風呂に一緒に入ることにはならなかったが、横島と少女達はこの日も異空間アジトに来ていた。

流石に眠かったのか早々に寝る事にした少女達を見送り、横島は少し眠れなかったのか別荘の目の前にある砂浜に降りていた。

もうすぐ夜明けの海を眺めながら、横島は何を思ったのかふと右手に霊力を集めてハンズ・オブ・グローリーを作り出していた。


「何それ?」

「俺の霊能力だよ。」

久々に使ったなと感じつつグローブ形態から霊波刀形態に伸ばしていると、背後から声に答えた。

実は横島が海に行くのを見た少女達と、別に休憩に来ていた刀子とアナスタシア達など全員が追い掛けて来ていたのだ。

少女達はいざ寝ようとしても寝れなかったらしく、仲間外れが嫌いなタマモも明日菜に抱かれて寝ぼけながら来ている。


「力の物質化か。」

「まあな。 最初に目覚めたのが霊力の物質化なんだよ。」

高畑と対戦した時以外は、滅多に魔法を使うことがない横島の能力を少女達は興味津々な様子で見ていた。


「才能だけは人一倍あったんだと思う。 偶然とか運命とかいろいろあったけど生き残ったしな。」

霊波刀はかつての物とは違い今は完全に物質化するほど強力であり、刀身には横島の顔が映るほどだった。

すっと降り下ろすと霊波刀が風を切る音が聞こえ、少女達はいつもとは少し違う横島に見えてしまう。


「昨日ここで見た夢のせいで悩んでるのですか?」

「……悩んでるってほどじゃないよ。 どうして分かった?」

「いえ、なんとなく。」

降り下ろした霊波刀を消した横島に夕映は直感的に横島が何かを悩んでるのではと思い、その原因に一歩踏み込み周りの女性陣を驚かせる。

正直なところ偶然に夢として見た平行世界の事は、少女達も多かれ少なかれ気になっていた。

夕映や一部の少女達は、横島がそれで少し悩んでるのも見抜いていた訳だが。


「悩むことないんじゃない? 結局私たちは今を生きるしかないんでしょ」

「映画とかだと不幸な未来を知ると、変えようとするわよね。」

「実際、個人の意思だけで変えていいのか疑問です。」

「でもさ。 昔の漫画の世紀末の世界みたいだと嫌じゃない?」

「おまちなさい。 歴史を変えるとして何処まで変えるのです? 誰もが納得する理想の未来などあり得ませんわよ。」

「そうね。 国が滅ぶような歴史でも生きてさえいれば、人はやり直せるわ。」

過去を変える。

言葉にすれば簡単だが、それは何処までも難しく深い問題になる。

少女達は横島の悩みをきっかけに自分達の意見を率直に口にして意見をぶつけ合った。


「このメンバーでさえ意見が完全に一致しないのに、世の中の意見を一致させるなんて無理よね。」

しかし仲がよく家族のような気心の知れたメンバーでさえ意見が分かれる事に、ハルナは珍しく真面目な表情でこの問題の真理とも言える一言をつぶやく。

そんなハルナの意見に少女達は沈黙した。

超鈴音が何を変えようとしたか知らないが、自分達の世界と未来は超鈴音に勝手に決めて欲しくない。

やはりそれが少女達の偽らざる本音だろう。

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