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その三

「歓迎会だなんて、子供じゃないんやし要らんわ」

「みんなの好意は素直に受け止めなきゃダメよ」

自分の歓迎会など必要ないと面倒そうに言い切る小太郎だが、ニッコリと笑顔でプレッシャーをかける千鶴の言葉には素直に頷くしかない

どうやら僅か一日で千鶴に飼い馴らされてしまったようだ


(即効で飼われてるのね。 さすが那波さん)

僅かな期間で飼い馴らされてると言うか順位付けが済んでる事に、明日菜や夕映達は感心したような呆れたような感じで見ている

同い年にも関わらず大人びていると言うか老けているようにも感じるが、それは禁句であった


「横島さんと並ぶとどっちが年上かわからなくなるね」

そんな中で空気が読めないまき絵がボソッと呟いた一言に、千鶴は敏感に反応する


「じゃあ先生は私が貰っても問題ないですね?」

小太郎に続き笑顔でプレッシャーをかける千鶴だが、まき絵はさっと横島の背後に逃げていた

しかも千鶴の言葉に対抗してか後ろから横島に抱き着くが、微妙にピリピリした空気が流れていく


(なんで俺が矢面に 立たされてるんだ?)

横島としては千鶴がまき絵をからかってるだけだと理解してるが、二人の間に微妙な空気が流れている

それにまき絵の空気が読めない発言と逃げ足の速さは、かつての横島自身を思い出させるものだった


(なんか面白くない)

一方単純なまき絵は千鶴の言葉をそのまま受け止めてしまい、木乃香や自分達にはない大人な千鶴に危機感を募らせてしまう


「ケンカはあかんよ。 那波さんもまきちゃんをからかったらダメや」

二人に挟まれた横島が助けを求めるような視線を送った先は木乃香だった

相変わらず女の子の揉め事を解決する能力が皆無な横島には他に方法がない


(何気に横島さんも木乃香に飼われてる気が……)

助けを求める視線で仲介に入った木乃香によりその場は収まるが、端から見ていた明日菜は横島も木乃香に飼われてるのではとの疑惑を感じる

修行外の日常生活において横島はあまり何かをしないし、木乃香が仕切る事が最近多かったのだ


(現在の麻帆良において最も影響力があるのは木乃香ですね。 麻帆良において力のある学園長・横島さん・エヴァンジェリンさんの三者と対等に話せるのは木乃香だけです)

一方状況を見ていた夕映は、木乃香の影響力を冷静に分析していた

麻帆良においての権力者はもちろん学園長なのだが、横島とエヴァが学園長を越える実力を持つのは明らかなのだ

その価値観が違う三者とまともに話せるのは木乃香くらいなのである

気難しいエヴァですら木乃香には気を許してる節があるのだから


「ちず姉があんな冗談言うの珍しいね」

「そういえばそうですわね」

そんな微妙にピリピリした空気が収まりホッとする夏美とあやかだが、千鶴が男の話題で冗談を言うのは珍しいと感じていた

周りに年頃の男が居ないからだろうと考えるが、千鶴は千鶴で現状を楽しんでるのではと二人は思う


(可愛い女の子に囲まれる生活って、昔なら血の涙流して喜んだんだろうが…… 現実って難しいな)

木乃香のおかげで危機を脱した横島だが、女の子の難しさを痛感している

相変わらず後ろにくっついたままのまき絵からは小ぶりだが柔らかな感触が伝わり若干気持ちいいが、かと言って彼女達をどう受け止めていいかわからない

流石に最近は好意を向けているのは何となく理解しているが、それ以上どうすればいいのかまるでわからないのだ

何も考えずに飛び掛かっていたあの頃が少し懐かしかった



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