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二年目の春・9

「お待たせしました。 一口揚げパン、チーズ味です。」

さて店の方は大盛況でみんな忙しそうに働いているが、今日から売り出したチーズ味の新しい味の揚げパンが大人気だった。

甘くない揚げパンが一つくらいあってもいいんじゃないかという意見から生まれた物で、少し味付けしたとろりチーズソースがかかった一品になる。

食べやすい一口揚げパン故に、こういった味付けも出来るようで女子ばかりか成人にも人気だった。


「チーズソース追加まだ?」

「今、出来るえ。」

店の行列は店内で食事と持ち帰り用に分けているが、純粋なリピーターは持ち帰り用に並ぶ人も多く、売れ行きもわんこひつまぶしと一口揚げパンは共に絶好調である。

売り上げ数は持ち帰りが出来て調理が簡単な一口揚げパンの方が多く、可愛らしいファンタジーな容器を用意したことも人気の要因らしい。


「ちょっと、タマちゃんがまたどっかのマスコミに撮られてるわよ!」

「ああ、もう。誰か雪広グループの人呼んできて!」

一方タマモは相変わらず店内と店外を行き来して案内や細かい雑用をこなしていたが、勝手にタマモを撮影し始めてインタビューするマスコミが現れると少女達は慌てて雪広グループの社員を呼びにいく。

本来ならば学園の取材許可と主催者や主催サークルの許可や個人の許可を取るべきなのだが、お祭りなんだからいいだろうと勝手に取材するマスコミが居て迷惑していた。

中には以前に問題を起こして、麻帆良学園の出入り禁止にされてるところもあり確信犯もいる。

マスコミの取材姿勢や取材方法の問題は近年インターネットで問題提起されているが、麻帆良でも同じようだった。


「貴方達、何処の人ですか? 許可書を見せて下さい。 それと未成年への勝手な取材はお断りしております。 場合によっては法的手段の対象になりますよ。」

「おたくだって宣伝になるんですら。 いいでしょう?」

「弊社は貴方達のようなルールを守れない人に宣伝を頼む気はありません。」

勝手に取材していたのはテレビ局の下請けだった。

自分達は報道の自由があるんだ取材してやってるんだと尊大な態度を取る彼らに、雪広グループ社員は毅然とした態度で撮影したテープや画像の提出と削除を要求する。


「分かりました。 この件は正式に本社にて対処させていただきます。」

のらりくらりと話を引き伸ばして許可を得ようとするマスコミに周囲からは冷たい視線が注がれ、一連の様子は周囲の学生がインターネットに動画としてアップしたことで問題は一気に表面化していく。

そしてこの数日後には麻帆良学園と雪広グループは連名でこの下請け会社に止まらず、親会社のテレビ局や新聞社にまで抗議をして、雪広及び那波が関連企業を含めた関係会社との取引の停止を告げる騒動になることになる。


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