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梅雨の終わり

(近くで見てると改めて分かるわね。 横島の価値は……)

変わってしまった令子の姿に、エミは改めて横島の存在の大きさを感じる

魔鈴と令子は少し前までは逆の立場だったのだ

一人で生きて来た魔鈴が横島によって周りの中心になりつつある現状を良く知るだけに、一人になった令子には怒りが沸くどころか哀れにさえ思ってしまう


その後エミは一人で夜の街に消えてゆく

良くも悪くもライバルとして対立していた相手の自滅には、流石に考えさせるものがあったようだ



「エミのやつ覚えてなさいよ!」

一方エミに無視された事に苛立つ令子は、浴びるように強い酒を飲んでいく

エミの言葉の意味も考えぬままに……

いや、考えたくても考えられないのかもしれない

彼女が美神令子である限り



同じ頃美智恵は、オカルトGメンの事務所で残業をしていた

例の殺人事件での警察との対立の後始末や、現在も捜査を続ける警察のバックアップなど細かな仕事が溜まっている

西条がこの件には向かない事もあり、仕事の比重が美智恵に 掛かっていたのだ


「うぐっ…… うぐっ……」

「ひのめどうしたの?」

そんな時ソファーで眠らせていたひのめが突然泣き始めた為に、美智恵は慌ててひのめをあやしていく


「ごめんね~ もうすぐ帰るからね」

本来は育児休暇を取りたい美智恵だが、代わりが居ないのが現状である

組織として確立しているならば西条でも十分なのだが、日本のオカルトGメンは組織としてはあまりにも未熟過ぎた

それにアシュタロス戦の影響もあり、各方面との関係が難しいのだ

オカルトGメンを日本に定着させて軌道に乗せるには、オカルト界のみならず政財界との関係など日本独特の付き合いも必要であり西条では力不足だった


「あなたはどんな大人になるのかしらね」

再び眠り始めたひのめを、美智恵はホッとしたように見つめている

孤独に苦しむ令子の現状を思うと、美智恵はどうしてもひのめにはいろいろ期待してしまうようであった



そして美神事務所では、おキヌが自室で静かに勉強をしていた

長年幽霊だったおキヌは、普通の高校生と違い小中学校に行ってない

そのため高校の勉強に着いていくにも、おキヌは毎日長い時間勉強が必要なのである

横島との一件以来も毎日の勉強は欠かさないのだが、それでも勉強に身が入らなくて成績が急降下していたようだ


「………」

カリカリとノートに書く音が静かな部屋に響く中、おキヌはふと窓から外を見つめる

夜空に白く輝く大きな月の光に、おキヌはしばし目を奪われてしまう

暗い闇を照らす柔らかい光が、何故か心地よく感じる


「頑張らないと……、またみんなに心配かけちゃうな」

しばし我を忘れて月を見つめていたおキヌだが、いつまでそうしていられなかった

今年に入って急変したおキヌの様子や成績に、クラスメートや担任の鬼道が心配しているのだ

みんなに心配をかけたくないおキヌは、以前よりもより勉強を頑張るしか今は出来る事が無かった


珍しく平和な東京の夜は静かに過ぎてゆく


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