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二年目の春・9

予期せぬ出会いがあったものの、その後は特にトラブルらしいトラブルもなく一行は麻帆良祭を満喫していく。

特にタマモは初めての麻帆良祭なこともあり、途中で貰った風船を片手に横島達をあちこちに引っ張り回す程だった。


「元気ね。」

「初めてやから、楽しくて仕方ないんや。」

明日菜も木乃香もまだ老け込む年ではないが、タマモのテンションと元気さはさすがに異次元の世界であり、若さの違いかとふと感じてしまう。

事実明日菜と木乃香も初めての麻帆良祭の時は、時間が過ぎるのを忘れるほど楽しんだ記憶がある。

夢のような世界。

まさにその言葉の通りで、見るもの食べるもの全てが刺激的で新鮮に感じたことは記憶に鮮明に残っていた。


「つぎは、あれ! あれいこう!」

「わかったって。 そんなに引っ張らなくても行くから。」

タマモという少女は少し変わっている。

遊ぶよりもみんなと一緒にお手伝いしたいと言うし、ワガママらしいワガママは仲間外れが嫌いで怒るくらいか。

それがこの日はある意味、普通の子供のように横島達を振り回している。

横島もまたそんなタマモに振り回されつつも、何処か嬉しそうにしていた。

辺りを見渡せば同じような子供連れの人や、恋人のようなカップル達も多い。

自分達はどう見えるのかと木乃香達は気になるが、きっとまた検討違いな見られ方をするのかと思うと、少し可笑しく感じ笑ってしまう。

彼女達は横島との関係や横島とアナスタシアの関係など、周りから聞かれることも少なくない。

普通に仲良くしてるだけだし、人に恥じることなどしてない。

ただ、みんなで一緒に居て共に時を過ごすのが好きなんだと伝えても、あまり理解してくれない人は多い。

本当はもうエッチしてるんだろうと、そんな見られ方をすることもある。

流石にもう馴れたこともあり、信じてくれないなら好きにすればいいと半ば開き直っているが。

まあ、客観的に見ると横島が誰にも手を出してないことの方がリアリティがないのは、少女達も理解はしていた。


「あすなちゃんもこのかちゃんも、はやく! はやく!」

「今いくえ。」

「もう、走ったら危ないわよ!」

不思議な関係だなと木乃香や明日菜ですら本音では思う。

周りにいる家族・友人・恋人の、どれとも違うと言えるのだから。

目の前でぶんぶんと手を振り急かすタマモに、二人は足早にタマモを追い掛けると思わず笑っていた。

時が過ぎるとタマモも成長して、今日のタマモとまた違うタマモになるだろう。

ならば今日この日をめいっぱい楽しんで、忘れられない思い出にしたい。

そんな風に思いながら、二度と戻らぬこの時をみんなで楽しむことにする。



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