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二年目の春・9

その頃麻帆良市内の某所では、関西からの助っ人の三人がボランティア警備員として町を巡回していた。

ほとんど観光に近いが、迷子を保護したり道を聞かれて地図を片手に四苦八苦しながら教えたりと頑張っている。


「なあ。」

「ああ。」

しかしそんな彼らの表情が変わったのは、一人のチャラい若い男性を見た時だった。

魔法関係者ではないが、堅気の者でもない。

恐らく中華系の人間だろう。

目線や表情に雰囲気で少し怪しいと睨んだ彼らは、魔法協会の中央指令室に連絡して尾行を始める。

修羅場という意味では関東の者より潜り抜けている。

妖魔などの闇の者との戦いばかりではなく、道を踏み外した魔法関係者や他国のスパイに、一般のマフィアともやり合った事があった。

魔法と裏の世界の境界が、曖昧な国や地域は多い。

マフィアの上層部が魔法使いを雇ってるなんて事も、海外では珍しくないのだ。


「どうだい?」

「多分末端だな。 違法薬物だと思うが……」

そんな彼らに合流したのは、高畑だった。

周囲には他にも数人の魔法関係者が配置していて、いつでも取り押さえる用意は出来ている。


「ちょっと、揺さぶってみようか」

まるで獲物を探すように宛もなくふらふらと歩く怪しい男に、高畑が動いた。


「ちょっと、いいかな。」

「何だ。 オッサン。」

「この近くで妙な薬を売り捌いてる人が居るって、通報があったんだ。 ちょっと話を聞きたいから、来てくれないかい?」

怪しい男の前に立ちふさがるように立った高畑に、男は威嚇するように睨む。

しかしそんな男にも引くはずのない高畑に男は少し表情が険しくなり、まるで警察だと言わんばかりに話掛けると、男は一目散に逃げ出した。

高畑の名誉のために言えば、高畑は警察だとは名乗ってないし警察手帳のようなものを見せたりもしてない。

ただ堂々と確信ありげに男に話しかけただけになる。


「おっと。」

「どけ!」

「何や? やんのか!?」

男が逃げた先はちょうど関西の助っ人の方だった。

まるで偶然のように装いながらも、男の進路を塞いで助っ人達は関西弁で怒鳴り裏の顔を見せると、男は彼らをかわして逃げようとするが……。

関西の助っ人の一人がすっと足を出すと、引っ掛かり転んでしまう。


「やっぱり、薬物だな。」

あっさりと転んだ男の上着のポケットからは、怪しげな薬が飛び出して辺りに散乱する。

高畑と関西の助っ人達はそれを確認して、すぐに警察に連絡した。


「お手柄でしたね。」

「いや、このくらいは朝飯前ですよ。」

男はやはり違法薬物を持っていた。

カモになりそうな人間を探して、無料で配るつもりだったらしい。

早期発見した関西の助っ人達に高畑や関東の者は感心して、両者は一仕事を共に終えた事で互いに打ち解けていく。

関東からすると助っ人のお客様のような感覚があり、古き伝統に煩い少し怖いイメージもあったりしたが、彼らは普段は関東の魔法関係者と大差なく、僅か数人だが両者の溝は確実に無くなりつつあった。


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