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その三

小太郎を連れ出した横島は昼ご飯を小太郎のリクエストで焼肉にしたのだが、小太郎は遠慮なくガツガツと食べていた


(食べ放題にして正解だな)

かつての弟子を名乗る少女を思い起こす食欲の小太郎に、横島は食べ放題の店に来て正解だったと思う

それほど仲がいい訳でないし、普通はもう少し遠慮するものなのだが小太郎は全く遠慮がないのだ


「そういえばお前、あの白ガキの誘い蹴ったんだって? その上わざわざ麻帆良まで危険を知らせに来るなんて変わってるな」

「俺はもうネギと敵対する理由があらへんからな。 それに汚いやり方は許せんのや」

山のような空の皿に囲まれてようやく落ち着いた小太郎に横島は昨夜の事件の真意を尋ねるが、その答えは微妙なものだった

よく言えば自分なりの正義があると言えるが、悪く言えば思考が単純な子供なだけである

しかし小太郎の人生は決して恵まれてなく厳しいようだが、まだそれでも世界に絶望するほどでない事には横島も安堵していた



そしてそのまま適当な話で夕方まで時間を潰した横島が小太郎を自宅に連れ帰ると、ほどなくして木乃香達と一緒に千鶴や夏美達がやって来る

千鶴と夏美は小太郎との再会を喜び、特に千鶴が小太郎を抱きしめると恥ずかしそうに顔を真っ赤にする辺りは、やはり子供そのものだった


「小太郎君、無事でよかったわ。 これからは一緒に住みましょうね!」

「はっ……、ちょっと待ってえな! なんでいきなりそうなるんや!? だいたい俺は一人で暮しなれてるし……」

「ダメよ。 小太郎君は一緒に住むの」

再会の感動のままにどさくさに紛れて小太郎の今後を声高に主張する千鶴に、小太郎は慌ててしまい横島は唖然として言葉が出て来ない


「コタ君住む場所決まってよかったな~ ネギ君にも友達出来るし一石二鳥や」

「えっ!? 決まりなの? いいんちょとか夏美ちゃんの意志は?」

一人で小太郎を育てると言い放つ千鶴に木乃香は素直に小太郎の住む場所が決まった事を喜ぶが、明日菜はそんな勝手に決めていいのか疑問を感じている

しかし肝心のあやかと夏美はどちらかと言えば仕方ないと言った感じか

普段は優しく控え目な千鶴だが一度言い出すと聞かない性格もあり夏美は諦めているし、あやかも仕方ないかと言った感じだった


「よろしいのですか?」

「判断する前に、いろいろ説明しなければダメなんだけどな」

周りで見ている中で、複雑そうな表情で横島に尋ねたのは刹那だった

千鶴がどこまで考えてるのか分からないし、そもそも半妖の小太郎を引き取るのは簡単ではない

刹那としては後で小太郎や千鶴達が傷つくよりは、先に千鶴達に妖怪やら魔法を話して覚悟を問う必要を感じている

流されるままに半妖の小太郎を引き取って、後で正体がバレたらロクな事にならないのだから


「とりあえず昨日の説明をしないとな」

予想外に妙な展開になった事に軽くため息をはく横島だが、まずは魔法関係の裏情報を説明する必要があった

その上で本人が望むならば記憶を消して元の生活に戻すし、記憶を消さないならばしっかりと情報管理の必然性を説かねばならない


(まああの三人なら下手な事はしないだろうが……)

三人がどの道を選ぶかは横島にも分からないが、秘密を簡単に暴露するタイプではないと感じていた

一番危なそうなのは、やはりここには居ないネギなのだから
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