このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

二年目の春・9

「行くぞ。」

お昼が過ぎた頃になるとアナスタシアは、店を閉めて鈴江の腕の中に収まったチャチャゼロと初音と鈴江と四人で町に出た。

あまり人混みが好きでないのは今も変わらない。

ただ、それでも過去のように行き交う人々の無邪気な笑顔に、不快感を感じることも無くなった。

全ては過去の出来事なのだ。

魔王と呼ばれた事も、ナギと出会い待っていた事も。


「アナスタシアさん! お一ついかがっすか!?」

明らかに外国人の容姿であるアナスタシアも、この日ばかりは大きく目立ってはいない。

だが、それでも最近麻帆良で顔を知られつつあるだけに、意外にあちこちから声を掛けられる。

冷たく突き放すような態度と視線と言葉を、平気で口にするアナスタシアにも関わらず、特に男子大学生の人気は高い。

一部にはアナスタシアになぶられたいという、少し特殊な趣味の者も居るが。

まあモデルのような容姿なので当然と言えば当然だが。


「ふむ。まあまあだな。」

「ありがとうございまーす!」

途中大学生の出していた屋台の串焼きを一本ずつ貰い、辛口のコメントを残しつつ、アナスタシア達は横島達の店へと向かう。

約束の時間までは、まだ少し早い。

タマモは行列の整理をしていて、アナスタシア達は隣接する雪広グループのイベントステージの前にある椅子に座って待つことにする。


「おまたせー! おまつりけんぶついこう!」

約束の時間になると、時間きっちりにタマモがやって来た。

一緒に居るのは横島と、明日菜・木乃香・夕映・のどかの五人だ。

他はサークルや部活の出し物や出店などがあって、そちらに行ったらしい。


「チャチャゼロもはつねもすずえも、よくにあってるよ!」

狐の着ぐるみのようなコスプレのまま来たタマモがアナスタシア達を見ると、チャチャゼロは猫耳を付けてコスプレしているし、初音と鈴江は犬耳を付けてコスプレしている。

あいにくとアナスタシアはコスプレしてなかったが、チャチャゼロ達は意外に麻帆良祭を楽しんでるらしい。

ちなみにアナスタシアは、日頃から服装がどっかの海外セレブのように派手なので、コスプレ集団と一緒でも違和感はなかった。

ちょっとゴスロリっぽい服が多いが。


「何処から行こっか。」

「おうまさん!」

「馬? ああ、いいんちょのとこね。」

タマモ達と合流し、一行は麻帆良祭の公式パンフレットを見つつ何処に行くか相談を始めるが、タマモが最初に行きたいと行ったのはあやかの馬術部だった。

例によってタマモはみんなからあれこれと誘われていて、行きたいところがたくさんある。

チャチャゼロがいつものように、タマモのリュックに収まると、一行は麻帆良祭見物に出発することになる。

どうもチャチャゼロはタマモのリュックが、意外に気に入ってるらしい。


34/100ページ
スキ