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二年目の春・9

空には学園所有の飛行船や大学部の気球が飛んでいる。

飛行船や気球の間を縫うように、麻帆良大の航空部による複葉機による曲芸飛行が行われいた。

学園祭と言える規模でも祭と言える規模でもない。

まさに学園都市の祭典と言える麻帆良祭の開幕だった。


「では皆さん。 連覇に向けて三日間全力で参りましょう!」

3ーAの森の不思議なレストランでも麻帆良祭開幕五分前になると、少女達に横島とタマモと超包子の応援メンバーが揃い、円陣を組んで気合いを入れる。

麻帆良祭のイベントや出し物のランキング連覇。

それを明確に意識し一つの目標として、最初で最後の中学三年の麻帆良祭を迎えることになる。


「いらっしゃいませ~!」

「ただいま、オープンです!」

花火と共に麻帆良祭がいよいよ始まる。

店舗の前には開店を今か今かと待ちわびる人達が列を作っていて、隣接する雪広グループのステージでは開幕イベントが始まろうとしていた。

昨年度の覇者である3ーAの店舗は、今年は注目の出し物の一つとして、公式非公式問わず麻帆良祭を紹介する雑誌にフリーペーパーやインターネットのホームページなどで、必ず上げられる程になっている。

他にも店舗の外には報道部の取材クルーを筆頭に地元のローカル新聞やローカルテレビの取材まで来ていて、注目度の高さを伺わせる。

複葉機の曲芸飛行が店舗の真上を飛び、賑やかな音楽や歓声が聞こえてくる中での開店だった。


「うわぁ。 おっきな木だ!」

「あっ、動物さんよ。」

この日の並んでいるお客さんは前日までとは違い、市外からの一般客が多い。

タマモが思い描き横島と少女達が作り上げた、木の中にある不思議なレストランの外観に子供たちは驚き、現実の店舗と組み合わせた立体影像の木の上部の葉や動物達の姿には大人ですら驚愕する。


「……凄いポー」

「楽しそうだポー」

まあ中にはちょっと浮いた雰囲気の、田舎者の外人のような変な人もちらほらと見られるが。

遊園地やテーマパークにあっても可笑しくないクオリティの出し物に、人々はまるで夢の世界に来たかのように笑顔を見せた。


「タマちゃん! こっち向いて!!」

ちなみに今日のタマモは気合いを入れる為か、狐のコスプレをしている。

モコモコの着ぐるみのような衣装を来て、尻尾をフリフリさせながら行列に並ぶ人達にメニューのチラシを配っていると、顔馴染みの女子高生に声を掛けられて、振り向きカメラ目線でちょっと不思議なポーズを決めた。

ここ数日すっかりアイドル並の人気が出て、何度もリクエストされたので、撮影されるのも慣れたものだ。


「あの子、可愛いな。 ちょっと撮っとけ。」

そんなタマモの姿に地元ローカルの新聞やテレビの取材クルーもタマモを撮影し始めると、本当のアイドルのような注目が集まってしまう。


「メディアの皆さん。 撮影は構いませんが未成年者の子供ですので、写真や映像を媒体に使用する場合は雪広コンツェルン広報部の許可を必ず得てください。 場合によっては法的措置の対象になります。」

周囲には当然雪広グループの社員も居て、若い社員の一人はマスコミがタマモを撮影し始めると、マスコミに対して写真や映像の無許可の使用をしないように呼び掛けた。

3ーAの出し物の注目度から雪広グループでは広報部の人を配置して、マスコミが勝手なことをしないようにしている。

学園の学生は学園が取材許可を出せるが、学園に所属してないタマモは別であり、タマモのメディアでの使用は保護者である横島の同意を得てからという話で、雪広コンツェルン広報部が管理を委託されていた。



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