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二年目の春・9

「以上で説明を終了します。最後に麻帆良祭では予期せぬ事態が起こる事があります。連絡と報告は密に願います」

一方魔法協会の施設では、早朝からミーティングが行われていた。

賑やかで楽しい麻帆良祭だが、それを支える裏方もまた多い。

特に魔法協会では決して表沙汰には出来ないが、一年で一番大変な三日間である。


「しかし、近代的だな。」

「ああ、西とは偉い違いだ。」

そんな早朝ミーティングに参加していた関西呪術協会の助っ人の者達は、警備態勢が近代的な関東魔法協会のやり方に素直に驚いていた。

関東魔法協会では麻帆良市内の各所にある防犯カメラは当然ながら、表の警備員や生徒やボランティアや一般市民に、警察からの情報も総合的に一元管理する中央指令室が存在する。

準備期間中から中央指令室を使ってはいるが、本番は本当に麻帆良市内全土を一元管理する仕組みがあることに驚きを隠せない。

無論関西も個々の実力は決して負けてはいない。

遠視の術や式神など、多彩な術を駆使して警備を行う。

ただ一方で組織とした連係はあまりされてなく、個々の力量に頼るやり方が現代まで続いている。

元々関西呪術協会は開かれた魔法協会ではないので、本拠地に大量の人が来ること自体ないので、また話が違うとも言えるが。


「ああ、関西の人達。 貴方達もこれ持って行って!」

「いいのか?」

「もちろんだ。 それがあれば、ほとんどの屋台や店で食べるから。 せっかく来たんだ。 楽しみながら警備を頼むよ。」

「おう。 任せときや。」

関西からの助っ人は二十人程いて、彼らにも連絡用の通信アイテムや麻帆良祭の店で使える金券なんかを配られた。

表向きはボランティア警備員となる彼らには、一般のボランティア警備員と同じく金券が学園から配られるらしい。

まあボランティア警備員といっても仕事は様々で、交通整理から迷子係に指定のエリアを巡回する仕事まである。

魔法関係者は基本的に巡回する仕事が割り振られていて、関西の助っ人も指定されたエリアを一日巡回するだけだった。


「これって問題なきゃ、ただの観光にならないか?」

「そういう場合もあるな。 重要施設は三日間は封印しちまうし、そこまで厄介事は多くないな。 今年は例の世界樹の問題もあったが、あれ解決したらしいし。 どっちかというと薬物とか持ち込む暴力団やマフィアが居るから、そっちに気を付けてくれ。」

ちなみに関西の助っ人は準備期間中からボランティア警備員として働いていたが、トラブルらしいトラブルはなく喧嘩の仲裁やナンパ男を注意するなどたいした仕事をしてない。

彼らからすると余所者だけに、あまり忙しくない場所に回されたのかのかと考えてもいたが、麻帆良祭期間の魔法関係者の警備員は何処も似たようなものになる。

本当に魔法協会の施設への進入を試みたり魔法犯罪への対処は、高畑などの腕利きの人間が回るので一般の魔法関係者はそこまで危険な問題の対処をすることはない。

自分達が必要だったのか少し疑問もあるが、特別待遇ではない一般の魔法協会員と同じ仕事なだけに特に文句もない。


「やっぱ組織の規模が違いすぎるな。」

「ああ、関西は少数精鋭だが。 どっちがいいか迷うな。」

少数精鋭で技術や力の質を高いレベルで維持する関西呪術協会と、毎年新人が入り学生の卒業で引退する人も多い関東魔法協会。

どちらがいいのか、関西の助っ人達は魔法協会の組織の難しさに悩む事になる。

とはいえ自分達は関西の代表だという誇りがある彼らは、初めての麻帆良祭に多少浮かれながらも仕事は仕事で気合いを入れて行うことになる。

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