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二年目の春・9

「クルト・ゲーデル逮捕カ」

超鈴音がクルトの逮捕を知ったのはこの日の朝だった。

詠春によるクルトを否定する映像が出た時点で、超鈴音はクルトは終わりだと感じたが、それが逮捕という結果となると複雑な心境のようだ。

賛否両論あるし、クルトは超鈴音の未来世界でも魔法世界に行ったネギと少女達を、罠に嵌めて利用しようとしたりと決して誉められた男ではない。

しかしそれでも、クルトほど何よりも魔法世界を救おうとした元老院議員はこの時代には居ない。

メガロメセンブリアにとっては、必要な人だと超鈴音は考えている。

それ故に今回の結果はあまりに惜しく感じる部分もあった。

「メガロメセンブリアの改革派は、当面動けませんね。」

「彼は魔法世界を救える可能性のある人だったヨ」

友人でありルームメートの葉加瀬と共に、メガロメセンブリアのマスコミにスキャンダラスな人間として叩かれているクルトを見ている超鈴音であるが、あまりに一方的な報道に怒りや悲しみを通り越して、呆れたような複雑そうな表情をしている。

人の不幸が飯のタネとまでは言わないが、クルトが成したことや努力したことすら否定するような報道には違和感しか感じない。

尤も超鈴音自身も当初からクルトと協力出来ないと考えていて、クルトのやり方を完全に認める訳ではない。

だがそれでも混迷し、真実から目を背けてばかりの人々には必要な人だった。

また一つ魔法世界を救われる可能性が失われた。

超鈴音にはそう思えてならない。

「おっと、時間ネ。」

「行きましょうか。」

ただ超鈴音は不思議と、魔法世界の為に動こうとは思えなかった。

もしかしたら動けなかったという方が正確かもしれないが。

超鈴音と葉加瀬の為に動いてくれた多くの人々が、麻帆良には居る。

そんな人々を裏切り、無計画に突っ走るほど超鈴音は愚かではなかった。



「失敗した時の事を考えんのは、奴も赤き翼の一員ということか。」

一方近右衛門も、朝一番でクルト逮捕の知らせを聞いていた。

ただ近右衛門の場合は安堵した方が大きい。

最悪自分達が動かねばならない可能性もあったし、麻帆良に来られたら厄介としか言えない。

クルトの理想や行動の賛否以前に、関東魔法協会のトップとしては間違っても地球側に来られたら困るのだ。

それ故に近右衛門は土偶羅と話し合い、クルトの情報を巧みに魔法世界に流して捕まるように仕向けた。

直接介入程ではないが、あまり気持ちがいいことではない。

しかし麻帆良に来て、万が一にも明日菜や世界樹の地下の封じられた創造主に気付いたらと思うと放置は出来なかった。

出来ればもう少し妥協をしたり、失敗した時の事を考えられる政治家として生きて欲しかったのが近右衛門の本音だ。

尤も忙しい麻帆良祭初日だけに、近右衛門はクルトのことばかり考えても居られない。

手早く身支度を整えて、この日の予定をこなさねばならなかった。



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