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真の歴史へ・その二

同じ頃タマモと雪之丞も、香港の裏通りで情報を集めていた


「ねぇ、面白い話でもない?」

街の裏通りの一角にある小さなバーを訪れたタマモは、酒を一杯注文しつつマスターに尋ねる


「そんな話があったら俺が聞きたいよ。 こんなしけた店に聞こえてくる話なんてロクな話がない」

マスターはタマモに酒を出しつつ、渇いた笑いを浮かべた


「俺達は金になる話を探してるんだが、なんかないか?」

酒ではなくソフトドリンクを頼んだ雪之丞は、頃合いを見計らって情報を聞きだそうとする

ちなみに雪之丞が酒を飲まない理由は、同じような店を何件も回ってるため付き合いきれないからだ


「さあな… ヤバい話ならたまに聞くが、これと言って珍しい話は無いな」

「そう、ありがとう」

マスターを探るように見つめたタマモは、たいした情報が無いと見抜き店を後にする



「ダメね… 特に情報を持ってそうな人は居ないわ。 妖怪や魔族はたまに居るけど、関係ありそうな連中は居ないわね」

「よくあの短時間で相手を見抜けるな…」

ため息をはくタマモに、雪之丞は短時間で相手を判別出来ることを感心していた


「一般人の考えや感情なら簡単に見抜けるものよ。 雪之丞でも訓練すれば、目や顔の細かな表情や呼吸のタイミングなんかで、だいたい見抜けるようになるわよ。 私の場合はそれにプラス、匂いや霊視で相手を判別してるけどね」

簡単に説明するタマモだが、雪之丞にはそこまで細かな違いから相手を判別するのは不可能である

タマモ自身は前世を含めると幾千年と言う経験があればこその技術であり、それほど簡単ではない


「ところで、さっきの店から尾行されてるけど気付いてる?」

タマモの言葉に雪之丞の表情に緊張が走る


「またか… 今後こそメドーサの手下か?」

さすがに雪之丞も振り向いて確認などしないが、後ろに神経を集中させながら尋ねた


「違うわね… 小物よ。 この辺りのマフィアの下っ端じゃないかしら」

面倒そうに話すタマモ

実は二人が怪しい連中に尾行されるのは、これで4度目である



「何か用かしら?」

裏通りの袋小路に入ったタマモは、妖艶な笑みを浮かべて尾行していた連中に話しかけた
 
 
「姉ちゃん達、何を探ってるんだ?」

二人を睨みつけて威嚇するチンピラ達は、銃やナイフをチラつかせている


「秘密よ」

ニッコリ微笑むタマモの目が、一瞬不思議な光を放ったことにチンピラ達は気が付くことは無く、次の瞬間には全てが片付いていた


「行くわよ」

まるで夢でも見てるように呆然と立ち尽くすチンピラの横を、タマモと雪之丞は通り抜けていく


「やっぱりその幻術は反則だな。 対人戦では無敵じゃねぇか」

見慣れたタマモの幻術の威力に、雪之丞は改めて驚いている

今日尾行して来た連中は全て同じやり方で撒かれていた


「それはそうよ。 これでも伝説にまでなった妖狐なのよ。 相手が霊能者でも幻術で騙せる自信があるわ。 昔の霊能者と違って、機械に頼る現代の霊能者じゃあ防ぐのは無理ね」

現代のGSは見鬼君や神通棍などの便利な霊能アイテムがある半面、術などは昔と比べれば圧倒的に劣る

一流と言われる令子ですら霊視も満足に出来ない


厳しい修業を要する術よりも霊能アイテムで十分なため、現代で複雑な術を使う者は少ないのだ

そのせいか幻術などに極端に弱いのである

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