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麻帆良祭への道

その後学校が怖いと言うさよを横島は少し悩んだ末に自宅に連れて帰っていた

流石にコンビニやファミレスで夜の恐怖を紛らわすのは、あまりに可哀相な訳だし

まあさよをあまり身近に置くと横島が抱える秘密の一端を知られる可能性があるが、仮に幽霊のさよに知られても正直横島には何の被害も発生しないだろう

というか六十年も人と話せなかったさよが秘密を第三者に漏らすなど、まず不可能なのだが……


「とりあえず夜は家に来ていいよ。 コンビニの前よりはマシだろ」

「いいんですか!?」

いつもより少し遅れて帰宅した横島は店の営業を始めつつもさよと今後の話を始める

夜にずっと相手をしてやれる訳ではないと前置きはしたが、外よりはマシだろうとさよを自宅に住むように誘うと彼女はパアッと明るい笑顔を浮かべて素直に喜ぶ

友達がどうとか以前に彼女は寂しかったのであり、横島の提案は彼女にとってこれ以上ないものだったらしい


「ああ、好きな時に来るといい。 ただし客が居る時は話し相手になれんからな」

「はい! ありがとうございます」

結局この日から横島宅には新たな同居幽霊が増えることになった

野良猫の次は幽霊というのはなんとも不思議な組み合わせだが、ある意味横島らしい出会いなのかもしれない


(どうも幽霊には縁があるらしいな)

オカルトから離れ一般人として生き始めた自分が再び幽霊と同居することに、横島は何か奇妙な縁を感じてしまう

だが一人の時間が正直あまり好きではない横島としては、素直に歓迎してる部分もあった


「よろしくな、さよちゃん」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

それは何処か懐かしいモノと新鮮なモノが入り混じったような気持ちだった

幽霊の悲しみや辛さ、そして人と共に暮らせる喜びが横島の中に沸々と沸き上がってくる

もしかすればそれはさよの嬉しそうな笑顔に、横島の中に居る彼女達が喜んでるからのかもしれない



「はっ……地縛霊?」

「そうなんです。 私、地縛霊なんですけど近いところなら行けるんです」

さて同居が決まったさよは自己紹介のように身の上話をするが、生前の事はあまり覚えてないようだ

まあそこは仕方ないし普通なのだが、問題はさよが自分を地縛霊だと紹介したことだった


「地縛霊って死んだ場所とかから動けないらしいんですけど、私の場合は存在感薄いので結構動けるんです」

横島が固まったことからさよは地縛霊の説明を始めるが、無論横島は説明されなくても地縛霊は知っている

というか横島が地縛霊と幽霊を間違えるなどあるはずがなかった

誰がさよに地縛霊だと教えたのかはさよ本人も覚えてなく、いつの間にか地縛霊だと思い込んでいるらしい

しかしさよは地縛霊ではなくただの幽霊である

地縛霊とはその字の通り何らかの理由により大地に縛られてる幽霊なのだが、さよは全くそんなことはない


(まさか麻帆良の結界のせいで勘違いしてるのか?)

幽霊のさよが麻帆良から出れない理由は麻帆良を包む結界が原因である

しかしさよは魔法などを知らない為に勘違いしてるらしい

横島は真実を告げるべきなのか告げなくていいのか、しばらく悩むことになる


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