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二年目の春・9

世界樹前広場は多くの学生や麻帆良市民で混雑していた。

近年は商業化により県外からの観光客も多いが、麻帆良市民にとっても麻帆良祭は年に一度のお祭りなのだ。

近隣の屋台は何処も賑わっていて、イベントや出し物を宣伝する学生も多い。

あまりに混雑して危ないので、タマモは先程から明日菜に抱き抱えられたまま、瞳を輝かせてキョロキョロとしている。


「いろいろ出店あるわね。」

「でも混んでるし、座るとこないよ!」

メインステージは世界樹を目の前にしたステージで、期間中には横島と美砂達が軽音楽大会に出場する場所でもある。

テーブルはかなりあるが、当然ながら今が一番混雑する時間なので空きスペースなどない。


「ダメだな。欲しい物買って、店で食うか?」

「その方がいいですわね。」

というか歩くだけでも大変であり、メインステージではちょっとしたイベントなんかやってるが見れる余裕もない。

みんなお腹が空いているので、結局は屋台などで夕食を買って帰ることにする。

ただ、ここで一行は予期せぬ事に遭遇してしまう。


「痛てえ!」

「あー! 私のお財布!」

横島が人混みの中を器用にすり抜けるように歩いていた、三十代らしきアジア人風の男の手首を掴むと、そこには横島に引っ付いているまき絵の財布がある。


「俺のツレの財布に手を出すんじゃねえっつうの。」

「スリですか!?」

「ああ。」

男の悲鳴にも似た叫びに周囲の足が止まると、視線は横島とスリの男に集まる。

少し離れた場所では気にせず騒いで人も居るが、横島は逃げれないように間接を決めてスリが手に持っていた鞄をあやかに渡すと、そこからは女物の財布が何個も出て来た。


「ちょっと、それ私の財布!」

「えっ! 私の財布も!」

その光景に驚く周囲だが、次から次へと出てくる財布の持ち主が周囲から名乗りをあげると騒ぎは大きくなる。


「あれ? 横島君?」

「ガンドルフィーニ先生。スリの現行犯っすよ」

横島達が居るのは混雑する世界樹前広場なので、当然ながらすぐに学園の警備や教師が集まって来た。

その中に居た一人はガンドルフィーニで、横島を見て少し驚くものの、証拠も証人もばっちりな現行犯である。

ただし横島は周囲に悟られぬように、ガンドルフィーニに男の指輪を見るように視線で合図した。


「なるほど。その男はこちらで身柄を預かろう。横島君達と被害者の人は悪いけど少し着いてきてくれないか? 話を聞きたい。」

それは魔法発動体であり、男は認識阻害の魔法を悪用していた魔法スリだった。

認識阻害で人目が集まらないことをいいことに、スリを繰り返していたらしいが、流石に相手が悪かった。


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