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幻の初恋

買い物を終えた横島と小竜姫は仲良く妙神山に戻っていた


少し遅い昼食を食べ終えると、横島は小竜姫に何かを期待したような熱い視線を送る


ジーー


ハアハア…


多少息が荒く興奮気味の横島に小竜姫は苦笑いしていた


「横島さん、後片付けしてきますから、待ってて下さいね」

小竜姫は視線の意味を理解しつつおあずけを言い渡し、横島はその言葉にこの世の終わりのような暗い表情になる


「やっぱり嘘やったんや~ 小竜姫様の膝枕を楽しみに今日まで生きて来たのに……」

横島は部屋の隅でどんよりした空気を背負っていじけている

今日の優しい小竜姫の様子からかなり期待していたらしい


「まったく…」

小竜姫は困ったような表情をしながら横島に近寄っていく


ぴとっ…


横島は突然背後から抱きしめられる


「うおっ!?」

小竜姫のいい匂いと少し小ぶりな胸の膨らみに、横島のどんよりした空気は一気に消えていた


「誰もしないとは言ってませんよ? 後片付けしたら膝枕してあげますから、大人しく待ってて下さい」

小竜姫は顔を赤らめながら横島の耳元で囁いて離れてた

どうやら小竜姫自身も、かなり恥ずかしいのを我慢しての行動らしい


一方横島は、小竜姫から迫られた刺激に溶けるような表情でぼーとしている

こちらは小竜姫のいい匂いと気持ちいい感触に思考がフリーズしたようだ


「横島さん?」

小竜姫はいつもと違い飛びかかって来ない横島を不思議そうに見る

まあ、別に飛びかかって来るのを期待している訳ではないが、来ないのは来ないで気になるようだ


小竜姫が不思議そうに横島の顔を覗き込むと…

幸せそうな表情でぼーとしている


「とりあえず、悪い表情ではないですね。 今のうちに後片付けをしますか」

小竜姫は横島の表情に安心して後片付けに向かう



その頃おキヌは…

厄珍堂に向かっていた


カーカーカー

おキヌの近くをカラスが飛んでいる


ぼとっ!!


何故か、カラスは突然墜落してしまう


理由は定かではないが、口からは泡を吹いている


そんなカラスに気が付くことなくおキヌは歩いていく


「くすくす… 今日はいいお天気ですね くすくす…」

おキヌの体からは相変わらず漆黒のオーラが垂れ流し状態である


「こんにちわ~」

おキヌは満面の笑みで厄珍堂に入る


「おう! おキヌちゃんアルカ。 お使いアルカ?」

怪しげなビデオを見ていた厄珍がおキヌを見た


「はい、美神さんに頼まれたんですよ」

何故かおキヌの表情は普通である

先ほどの漆黒のオーラなどまるで無く、別人のようだ


「えーと、マタゴンドラと、マムシと、トカゲと、イモリと、エクトプラズムと……」

おキヌは30種類にも及ぶ怪しげな品物を厄珍に注文する


「アイヤー、令子ちゃん何する気アルカ? ワタシ後の事知らないアルヨ」

厄珍はあまりの怪しげな品物に顔が引き気味だ


「すいません。 私も知らないんです」

おキヌは申し訳なさげに謝る


「おキヌちゃんは悪くないアルヨ。 ちょっと待つヨロシ」

厄珍は言われた品物を探しに奥に入っていく


厄珍が後ろを向いた瞬間……

おキヌは一瞬だけ漆黒の笑みを浮かべた



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