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梅雨の終わり

「そこで問題なのが殿下なのです。 一度人間界に行き、横島さんに褒美を与えに行くと言ってきかないんですよ」

ある程度の状況説明に続いて、小竜姫は今回の話を始めていた


実は横島と臣下の約を交わした事が、天竜自身にもいい影響を与えている

メドーサの事件で力の上では大人になった天竜だが、相変わらず神界では子供扱いのままだった

そんな扱いに不満を持っていた天竜を周りが見直すきっかけになったのが、アシュタロス戦である

以前から周囲に家来にしたと言っていた横島が偶然アシュタロス戦で功績を上げてしまった為に、それ以前に横島を家来にした天竜の評価も自然に上がっていたのだ

無論父親である竜神王は当時のいきさつや偶然の結果なのを理解しているが、天竜が大人として認められるいい機会だと判断したのか黙認したままである

その結果天竜は一度横島に会って、今度こそ約束の褒美を与えると言って騒いでいたのであった


「褒美ですか……」

本来は喜ぶべきかもしれない事だが、魔鈴の表情は微妙である

アシュタロス戦に関してはあまり触れて欲しくないのが本音なのだ


「殿下はまだ幼いです。 結局は自分が認められるきっかけを作った横島さんに、また会いたいだけでしょう。 それで竜神王様はパピリオちゃんと一緒に人界に降りるなら考えてもよいとおっしゃいまして」

小竜姫の説明を魔鈴は静かに聞いていたが、神界の事情などわかるはずがないしイマイチ理解出来ない部分が多い


「小竜姫様も分かっているでしょうが、横島さんの返事は変わらないと思います。 しかし何故、そんな高位の神族がパピリオちゃんと一緒に?」

天竜が横島に会いに来るのはいいとして、パピリオと一緒にというのに魔鈴は違和感を感じている

神魔界がデタントを進めてるのは横島から聞いて知っている魔鈴だが、魔族のパピリオと関わらせるのには天竜童子はあまりに高位過ぎると思うのだ


「すいません。 私も詳しい事情は知らされてないのですが、この案は老師が進めたとは言ってました。 元々老師はパピリオちゃんを気に入ってますし、悪い意味はないと思います」

魔鈴の問い掛けに小竜姫は困ったように知っている事を話すが、小竜姫自身詳しい真相は知らないようである


「私としては構わないのですが、身の安全は不安ですね」

何か釈然としない物を感じる魔鈴だが、基本的に小竜姫に対して断る事など出来るはずがない

パピリオが世話になっているし、それに横島共々魔鈴も目をかけて貰ってる立場な訳だし


「その辺りはこちらでやりますので大丈夫です。 ただ竜神王様からは、特別扱いをしないで欲しいと強く言われてますのでお願いします」

結局魔鈴は、小竜姫の頼みを聞き入れて天竜童子をパピリオと一緒に受け入れる事を決めた

まあ横島には事後承諾になるのだが、元々横島が断らないのは魔鈴も小竜姫も理解してる


「しかし、横島さんの立場は本当に難しいですね」

思わず出た魔鈴の本音に、小竜姫は少し申し訳なさそうな表情を浮かべた

魔鈴が小竜姫を責めてる訳ではないのは分かっているが、今回の件を止められなかったのは事実である

横島をそっとしておきたい小竜姫は天竜の人界行きを反対したが、力及ばず押さえられなかったのだ


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