麻帆良祭への道
西の空がオレンジ色に染まる頃、仮設店舗はすっかり静まり返っていた
先程までは少女達の元気な声が響いていたが、暗くなる前にこの日の作業が終了したのだ
最後まで後片付けをしていた横島は、休憩を兼ねて仮設店舗の入口付近に座り込んで一人でタバコを吸っていた
しかし正確には横島は一人ではなく、もう一人だけ誰にも見えないはずの少女が残っている
どうも少女は横島に興味を持ったらしく、先程から横島の隣に座りじっと横島を見つめていた
「君は帰らんでいいのか?」
西の空を見つめてタバコを吸っていた横島は、何処を見る訳でもなく突然小さな声で一言つぶやく
しかしその答えに返事が返ってくる事はない
一人だけ近くに居る少女は近くに誰か居るのかとキョロキョロ見渡すが、もちろん近くには誰も居るはずがない
「無視されんのは悲しいな~ ここには俺と君しか居ないだろ。 相坂さよちゃん」
タバコの煙りを吸い込んだ横島はちょっと悲しそうに振り返り幽霊少女である相坂さよを見つめるが、彼女は固まっていた
絶対に見えるはずがないとの思いが強いさよは、まさか自分が話し掛けられるなど信じられないようで思考が止まったらしい
「…………えっ?」
どれだけの時間沈黙が流れたかは分からないが、さよが気付いた時には横島が静かに見つめている
「びっくりさせちまったか? ゴメンな。 俺はずっと君が見えてたんだ。 なかなか二人になれるタイミングがなくて言えなかったんだけどさ」
それはさよが知る横島ではないように感じていた
さよが知る横島は2-Aのクラスメート達と一緒になって騒いでるイメージが強いが、今の横島はまるで別人のような雰囲気を放っている
そもそも横島とさよの初対面は、前回の定期テストの最下位脱出パーティーだった
あの時クラスメート達にと一緒にさよも横島の店に来ていたのだ
何度か話し掛けようかと思ったのだが、基本的に中等部に居るさよと横島はなかなか会う機会はなく更に二人で話せるタイミングは今までなかったらしい
「うそ……、私どんな霊能者にも見えなかったのに……」
「俺はちょっと特殊でな。 見えないモノが見えるんだ」
驚きや驚愕を通り越している様子のさよに、横島はとても優しく慈悲に満ちた笑顔をみせていた
それはまるで三百年の孤独を経験した彼女のような……
「つらく寂しかったんだな。 君の悲しみがちょっとは分かるつもりだ」
カタカタと震えて無意識に涙を浮かべてしまうさよを、横島は僅かに霊力が篭った腕で優しく抱きしめる
それはさよが忘れかけていた人の温もりに他ならない
「わたし……わたし……」
理由も分からぬまま溢れてくる涙をさよは止めるすべを知らなかった
何も考えられないし考えたくない
今はただこの温もりでおもいっきり泣きたいだけだった
先程までは少女達の元気な声が響いていたが、暗くなる前にこの日の作業が終了したのだ
最後まで後片付けをしていた横島は、休憩を兼ねて仮設店舗の入口付近に座り込んで一人でタバコを吸っていた
しかし正確には横島は一人ではなく、もう一人だけ誰にも見えないはずの少女が残っている
どうも少女は横島に興味を持ったらしく、先程から横島の隣に座りじっと横島を見つめていた
「君は帰らんでいいのか?」
西の空を見つめてタバコを吸っていた横島は、何処を見る訳でもなく突然小さな声で一言つぶやく
しかしその答えに返事が返ってくる事はない
一人だけ近くに居る少女は近くに誰か居るのかとキョロキョロ見渡すが、もちろん近くには誰も居るはずがない
「無視されんのは悲しいな~ ここには俺と君しか居ないだろ。 相坂さよちゃん」
タバコの煙りを吸い込んだ横島はちょっと悲しそうに振り返り幽霊少女である相坂さよを見つめるが、彼女は固まっていた
絶対に見えるはずがないとの思いが強いさよは、まさか自分が話し掛けられるなど信じられないようで思考が止まったらしい
「…………えっ?」
どれだけの時間沈黙が流れたかは分からないが、さよが気付いた時には横島が静かに見つめている
「びっくりさせちまったか? ゴメンな。 俺はずっと君が見えてたんだ。 なかなか二人になれるタイミングがなくて言えなかったんだけどさ」
それはさよが知る横島ではないように感じていた
さよが知る横島は2-Aのクラスメート達と一緒になって騒いでるイメージが強いが、今の横島はまるで別人のような雰囲気を放っている
そもそも横島とさよの初対面は、前回の定期テストの最下位脱出パーティーだった
あの時クラスメート達にと一緒にさよも横島の店に来ていたのだ
何度か話し掛けようかと思ったのだが、基本的に中等部に居るさよと横島はなかなか会う機会はなく更に二人で話せるタイミングは今までなかったらしい
「うそ……、私どんな霊能者にも見えなかったのに……」
「俺はちょっと特殊でな。 見えないモノが見えるんだ」
驚きや驚愕を通り越している様子のさよに、横島はとても優しく慈悲に満ちた笑顔をみせていた
それはまるで三百年の孤独を経験した彼女のような……
「つらく寂しかったんだな。 君の悲しみがちょっとは分かるつもりだ」
カタカタと震えて無意識に涙を浮かべてしまうさよを、横島は僅かに霊力が篭った腕で優しく抱きしめる
それはさよが忘れかけていた人の温もりに他ならない
「わたし……わたし……」
理由も分からぬまま溢れてくる涙をさよは止めるすべを知らなかった
何も考えられないし考えたくない
今はただこの温もりでおもいっきり泣きたいだけだった