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二年目の春・9

「九九、百。 もういいかい。」

タマモの突然のかくれんぼ発言に、急遽ベルサイユ宮殿で大かくれんぼ大会が行われることになった。

参加者は横島達ばかりではなくハニワ兵達も大量に参加していて、鬼はくじ引きの結果まき絵になっている。


「さあ、探すよ!」

先ほどまでの賑やかな空気が一変して静かになった宮殿内をまき絵は隠れてる人達を探して歩き始めた。



「かくれんぼね。 子供の頃以来かしら。」

ドキドキワクワクと隠れるタマモやハニワ兵達と対称的に、刀子は自分は何をしているんだろうとふと考えてしまう。

三十路女が子供たちやハニワ兵と一緒にかくれんぼをする光景を、端から見たらと思うと少し複雑な心境になる。


「ぽ?」

「私、学校の教師なのよ。 分かる?」

「ぽー!」

しかも何故か三体の見知らぬハニワ兵と一緒に隠れていて、楽しげなハニワ兵達を見つつ、何となく呟いた一言から会話が始まった。

ハニワ兵達からすれば珍しい人間というだけで、興味はあるのだろう。

刀子が自分の事を少し話すと、ハニワ兵達は興味深げに聞いていくことになる。


「ここにかくれよう」

「コンナトコ、スグニ見ツカルゼ。」

「そっか。 じゃああっち!」

一方タマモはチャチャゼロと横島宅の二体のハニワ兵達と四人で、隠れる場所を探していた。

豪華な部屋ではなく裏方の部屋に隠れようとするも、チャチャゼロが反対した為、まき絵に見つからぬようにと隠れる場所を探していく。

ドキドキワクワクとまるで逃亡者のように辺りを警戒しながら移動するタマモに、チャチャゼロはやれやれと言いたげな表情をしつつも付き合っている。

ただ拒否しない辺りチャチャゼロも嫌ではないらしいが。


「いい天気だな。」

そして横島はと言えば、庭の一角に隠れつつ青い空を見上げていた。

一緒に居るのは偶然同じ場所に目を付けた、あやかであった。


「せっかくのドレスですのに。 みなさん大丈夫かしら。」

「ちょっとくらい汚したり、皺になるくらいなら構わんぞ。」

わざわざドレスに着替えたのに、かくれんぼをする友人達の心境を理解できないようである。


「みなさんまだまだ子供ですわね。」

ここ異空間アジトは自分達の世界ではないと理解するあやかは、本当に不思議のハニワ国にでも来た気分になるのかもしれない。

思えばこの変な人に随分と振り回されてるなと、あやかは横島を見て思う。

一年前の時点では、ちょっと変わってるけど頼りになる人のようだとしか考えてなかったが。

いつの間にか毎日顔を合わせて、横島の仕事の手伝いをしているのだから不思議な心境になるのだろう。


「いいじゃねえか。 いずれみんな大人になるんだからさ。」

「横島さんも、いずれ大人になるんですの?」

「俺はもう大人のつもりなんだけどな。」

知らず知らずのうちに毎日会うのが当たり前となり、会わないと寂しさを感じる。

困った人と知り合ったのかもしれないと密かに感じてしまい、せめてもう少しだけ大人になって欲しいと心底思う。

友人達が離れられないほど惚れ込む姿にあやかは心配もしていて、横島がそんな友人達をどうするのかと気にかけていた。

端から見るとあやかも同類だとハルナ辺りは言うだろうが。

あやか本人は最後の一線で自分の気持ちを押さえてもいる。


「そう心配しなくても分かってるって。」

対する横島は少女達を悲しませることはしないと決めていて、あやかにも分かってるからと告げるが。

あやかは本当に悲しませることをしないならば、少女達を受け入れるしかないことを理解してるのか疑問だった。

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