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真の歴史へ・その二

「何が言いたいのかわからねぇよ」

少し不機嫌そうに話す雪之丞に、横島は何と説明していいか考え込む


「雪之丞さん、何故戦場に立ち戦おうと思うのかもう一度考えてください。 このまま私達と共に戦って行けば、命の危機は何度もあるでしょう。 私達は戦う理由がありますが、今のあなたには戦う理由がありません」

少し厳しい表情の小竜姫の言葉に、雪之丞は複雑な表情で再び考え始める


「横島も私達もあなたには期待してるわ。 あなたなら素晴らしいGSになれる。 だからこそ、横島はあなたに人として生きて欲しいのよ」

小竜姫とは反対にタマモは優しい表情で語っていた

そんなタマモの表情と言葉に雪之丞は驚きを隠せない


「雪之丞、あなたはまだまだ知らないことがたくさんあるわ。 女の子とデートしたり、友達と馬鹿騒ぎしたりとかね。 私達はそんな普通の人生を経験させたいのよ」

タマモの言葉を補足するようにルシオラは具体例をあげる

そしてそれは横島やルシオラ達が、前から考えていたことだった

才能もやる気もある雪之丞だが、幼い頃両親を亡くした影響により年齢の割に普通の経験が少ない

もっといろんな楽しみや生き方があるのを、雪之丞は知らない


ある意味、昔の横島とは正反対な生き方をしている雪之丞に、そんな普通の生き方も経験させてやりたい

二度目の人生だからこそ、横島はそんな思いが強いのだろう


「もう一度考えてくれ。 何故戦うのか。 本当にそれでいいのかな…」

横島のその言葉で、この日の仕事は終わりとなった

緊張感があった事務所内の空気が一気に緩むが、雪之丞は難しい表情のままである



その日の夜、自宅のアパートに帰った雪之丞は眠れぬ夜を過ごしていた


(ママ…)

殺風景な部屋で電気も付けずに考え込む雪之丞

元々寝に帰るだけの部屋だけに生活している気配は無い


そんな部屋で雪之丞は過去を思い出している

赤ん坊の自分を残して亡くなってしまったママに強くなると誓い、今まで生きてきた

そんな、ただ強くなりたい一心で生きてきた雪之丞にとって、横島達の話すことは考えたことも無かった


(普通の人生か…)

雪之丞とて馬鹿ではない、横島達が何か自分と次元の違う目的のため戦っているのは感じている


(でも俺は……)

雪之丞が眠りについたのは深夜2時を過ぎてからであった



次の朝、学校へ登校した愛子を除き再び昨日と同じメンバーが集まる


「昨日言われたことずっと考えたけどよ… 俺にはまだよくわからねぇ。 でも、俺はやっぱり強くなりたい。 それに… 戦わないで後悔するよりは、戦って後悔したい。 俺も連れて行ってくれ」

雪之丞は今までに無いほど強く厳しい眼差しで、横島やルシオラや小竜姫やタマモを見つめる


危険だと理解しているからこそ、雪之丞は自分も戦う道を選んでいた

大切な人達が危険な時に、自分だけ安全な場所に居るのは我慢出来ない

そんな雪之丞らしい理由からであった

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