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二年目の春・8

「お疲れさま!」

その後、この日は最後まで残っていた二十人程を引き連れて食事に来ていた。

場所は仮設店舗から少し離れた大学部近郊で、大学部の農林水産系学部が合同で出している同じ仮設レストランだった。

こちらも行列が出来るほど混雑していたが、閉店前になんとか入ることが出来た一同は、それぞれに好きなメニューを注文して、少し遅い夕食となる。


「混んでるな。」

「大学部による公式出店ですからね。」

客層は大学生が圧倒的に多く、時間的なものもあるのだろうが年配者や子供はあまり見られない。

店の形態も普通のレストランであり、ウリは学部で育てた食材になる。

温室でこの時期に合わせて育てた野菜もたくさんあるし、肉や乳製品に魚介類も千葉麻帆良の水産学部で養殖したものらしい。

加えて品種改良もしてるので、新しい食材や品種もあるので麻帆良祭では昔から人気のようだった。


「このおやさい、おいしい!」

「本当ね。 日本じゃ珍しい野菜もあるわ。」

調理法はあまり凝った料理ではなく、素材をシンプルに味わう物が多い。

女性に人気なのはバーニャカウダのようで、少女達も頼み食べていてタマモも美味しそうに食べている。

一応3ーAの店から遠くないのでライバル店の視察も兼ねているが、店の形態からコンセプトまで違いすぎてあまり参考になりそうもない。


「ここも安いわね。」

「基本的に生徒が実習で育ててる食材ですからね。 人件費がかからない分、安く提供出来るのでしょう。」

「真っ当な文化祭の姿よね。」

小遣い稼ぎとランキングを意識している少女達と違い、文化祭の王道を行くような健全な店だった。

普通の中学生では、とても太刀打ち出来る相手ではないが、総合力では3ーAの店の方が上だろう。


「野菜いいな。 野菜のひつまぶしとかどうだ?」

「それ面白そう! どんなの?」

「さあ。具体的に考えるのは、これからだからな。」

ちなみにここのレストランの目玉は、学生が育てた食材だけの麻帆良カレーで、横島はそれに刺激を受けたように新メニューのアイデアを口にした。

その時の少し自信ありげな横島に、少女達は驚きと期待に満ちた視線を向けるが、具体的に考えていた訳ではないようで何人かの少女達をズッコケさせてしまう。

麻帆良に来てからは少し大人になったことと、土偶羅が影でサポートをしてるせいでそこまで目立ってないが、元々横島という男は感性で生きるタイプなのだ。

深く考える前に口に出すなんてよくあることであり、木乃香達はやっぱりと言いたげな顔をしていた。

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