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梅雨の終わり

一方笑顔の魔鈴に外に連れ出される横島だが、すでに冷や汗を流して表情がヒクついている

特に悪い事をしたという感覚はないのだが、百合子や令子のお仕置きのトラウマから自然とそうなるようだった


「横島さん……?」

何一つ話してないし怒った表情も見せてないのに、すでに怯えた表情の横島に魔鈴は逆に戸惑ってしまう


(私、そんなに怖い顔してたのかしら?)

横島の態度を見た魔鈴は、自分が怯えられるほど怖いのかと思うと少しショックだった

特に魔鈴は横島に手を挙げた事など一度も無いし、理由なく怒ったりした事すらない

たまに問題はあるが、そのつど横島の精神状態を考えてきちんと説明して注意している

まあ時々話す前から怯える事もたまにあるが、魔鈴からすれば気分のいい事ではなかった


「えっ!?」

横島の怯えた表情が驚きに変わる

魔鈴が何も話さないまま抱きしめて来たためだった


「横島さん、冗談で女性を口説いてはダメですよ」

魔鈴が語ったのはその一言だけである

もう少し横島が納得いくように話してやりたいが、今の横島に理解させるのはなかなか大変なのだ

正直言って魔鈴としては横島が冗談で女を口説くのは面白くないし、横島には妙に人を引き付ける魅力がある

今後の為にもある程度の常識を教えたいのだが、今の横島はそれ以前の問題だった


「よーこーし……」

そんな時に母屋から走って出て来たのはパピリオである

なかなか入って来ない横島に痺れを切らして来たのだが、パピリオが見たのはちょうど二人が抱き合っているところだった


「ゴメンでちゅ。 パピは大人だから、ちゃんと見なかった事にするから大丈夫でちゅ」

突然見た横島と魔鈴の姿にパピリオは若干動揺しつつ、始めて生で見る甘い二人に興奮気味に目を輝かせている

一応人間の大人の対応をしてるつもりらしいが、微妙に間違っているのはパピリオの情報源がテレビドラマだからだろう


「ちょっと、パピリオ!?」

見られた恥ずかしさからとっさに離れる横島と魔鈴だが、誤解だと言う訳にもいかずに言葉につまっている

横島としては魔鈴が何をしたかったのかわからないし、魔鈴としては横島の前で教育だとは言いにくい


結局二人はそのまま室内に入って流すしかなかった



「斉天大聖老師がテレビゲーム好きだなんて……」

一方居間でゆっくりしていたメンバーで驚き固まっていたのはピートである

シロが以前に老師に頼まれていたゲームソフトを渡す姿を、ピートは固まったまま見ていたのだ

元々ブラドー島を中心にヨーロッパしか知らないピートにとっては、神族と言えば厳格な存在だった

ヨーロッパ系に比べれば自由な東洋系の神族の中でも、特に自由な老師の姿は信じられないのだろう


「あの姿で判断すると後悔するぞ。 戦闘になれば強すぎて俺や横島だって何も出来んからな」

ゲームを渡すシロと受け取る老師の姿は、人間のおじいちゃんと孫の姿のように見えている

どうも来る前に老師の神族としての強さや立場を唐巣に聞いていたピートは、どう判断していいかわからないようだったが雪之丞はそんなピートを面白そうに笑っていた


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