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真の歴史へ・その二

ただ横島としては、対神魔戦の最前線に雪之丞を連れていくことに迷いが生じている

このまま自分達と共になし崩し的にアシュタロス一派と戦って行くことが、必ずしも雪之丞のプラスになるとは限らない

雪之丞にはアシュタロス一派と戦う義務も義理も無いのだ


横島は雪之丞もおキヌ達と同様に、過度にアシュタロス一派との戦闘に関わらせない方がいいかと悩んでいた


そんな横島の迷う姿をルシオラ達とヒャクメや老師は静かに見守っており、雪之丞やおキヌ達は少し驚きを感じて見つめている



(ヨコシマ…)

ルシオラは横島と出会った頃を思い出していた

周りに流されるまま戦う悲劇を誰よりも知っている横島を見ていると、複雑な気持ちになる


(私もあなたも覚悟も決意も無く戦っていたものね…)

お互い若く無謀だったと実感するルシオラ

あの時は精一杯だったが、二人共生き残れたのは奇跡のようなものだ

横島がこの辺りで雪之丞を危険から遠ざけたいと考えるのも当然な気がしていた



(横島さん)

小竜姫もまた横島と出会った頃をふと思い出している
 
 
(誰かに愛されたい。 今思えばその一心で戦場に立ち続けていたのでしょうね)

一見煩悩まみれだった横島の行動は、よく考えると不自然だった

ただやりたいだけならば普通のバイトをした方が確率は高いし、わざわざあんな環境で働く必要も無かっただろう

前世の縁が令子と横島を近付けていたのは理解しているが、結局横島は心から愛されたかったのだろうと小竜姫は思う


(運命とは皮肉なものですね… 横島さんの心を満たしたのはルシオラさんだった)


そして小竜姫は、雪之丞が何故戦場に立ちたいのか考える必要があると思っていた

ただ強い者と戦いたいだけなら、連れていく必要は無いだろう

事務所には雪之丞の求める相手がたくさんいるのだから…


雪之丞が危険な戦場に飛び込む理由と覚悟を明確にする、いい機会なのかもしれない

小竜姫はそう考えて無言で横島と雪之丞を見守っている



(横島…)

タマモは横島の気持ちを一番理解しているかもしれない

いくら強くなろうと横島は戦いに向かない性格なのだ

横島自身が自分達と生きることと引き換えに失った、普通の人間としての平凡な幸せを雪之丞には失わせたくないと言う思いが強いのを理解していた



「俺じゃ足手まといなのか?」

複雑そうな表情で問い掛ける雪之丞に対して、横島はすぐに否定する


「対神魔戦闘に限れば、戦力と言う点では合格だと思う。 ただ問題はそこじゃない。 死ぬかもしれない危険な戦場にお前が進んで行く必要は無いんだ」

横島の言葉を雪之丞はすぐに理解出来ないようで、少し考え込んでしまう

そしておキヌ達は《死ぬ》と言う言葉に驚き何とも言えない表情を浮かべる


「雪之丞、お前は十分強い。 このまま数年小竜姫達の修業を受ければ、近い将来必ず日本でトップのGSになれる。 だからこそ、仕事でもない戦いに無理に付き合う必要は無いんだ」

言葉を選びながら語る横島を雪之丞は静かに見つめているが、その真意を掴めないでいた


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