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二年目の春・8

「ほう、クッキーか。」

「今日限定販売するらしい。」

「相変わらずやること早いな。」

一方少女達の店をサポートしている雪広グループ関係者にもクッキーが味見程度に回ってきたが、このタイミングで新メニューを出したことにやはり驚いていた。

現状では十分すぎるほど混雑しているが、それでも新メニューを出したことにより、リピーターや更なる新規の顧客を得られるかもしれない。

売れてるからと言って満足せずに挑戦する姿は、見習いたいと彼らも思うようだった。


「あれ、美味いな。 オレ、クッキーってバターの味が苦手であんまり好きじゃないのに。」

「本当だ。 サクッとしてていいな。」

「あのマスターって、本当何者なんだろうな。 どっかで料理修行とかしてたんじゃないか?」

一般的なバターの風味がないクッキーなのでそれにより好き嫌いは分かれるだろうが、少量をつまむにはクッキーが苦手な人にも悪くないお菓子だった。

去年と違い横島はすでに麻帆良では著名な料理人の一人だ。

自身の料理の腕前はもちろんながら、弟子とも恋人とも噂される木乃香の躍進が、横島の力量と知名度を確固たるものにしている。


「あのマスター。 テレビや雑誌の取材、学園関係者以外は断ってんだろ?」

「らしいな。 うちの広報部が対外的な窓口になってるくらいだ。 マスコミはあんまりすきじゃないんだろうな。」

「というかマスターの店。 十分お客さん入ってるぞ。 学生と地元の人で。 麻帆良カレー目当てのお客さんも居るし、宣伝する必要ないだろ。」

通常ここまで売れると都心に近いこともあり、テレビや雑誌の取材で取り上げられる流れなのだが、横島はこれ以上の混雑を望んでなく一切断っている。

しかも取材申込みの連絡さえ嫌なのか、いつの間にか雪広コンツェルンの広報部が窓口になりつつある。

実際横島としてはアシュタロス戦に絡む報道からマスコミ関係者が嫌いであり、関わりたくもないのが本音だろう。


「惜しいな。 来年もあの子達で店やってくれないかな?」

「二年連続でこうも成功するって、大変なことだからなぁ。」

あやかのクラスだからと力を入れて協力した去年から、今年現在までの少女達の活躍は目を見張るものがあった。

宣伝広告としては間違いなく大成功であり、話題性は今年も健在なのだ。

毎年やってくれないかなと割と本気で思うのは、彼らが学生ではなく社会人だからかもしれない。

あちこちに最新技術や珍しいイベントがある麻帆良祭にて、これだけの動員力のあるドル箱な出し物は、早々あるもんじゃなかった。


「今年はタマモちゃんが人気だしな。」

「あの子に会いに来てる人、意外にいるみたいだね。」

ちなみに今年の少女達の店の中心は、間違いなく幼いタマモだった。

大人の横島と幼いタマモが、店の客層の幅を広げたと雪広グループの人達はみており、本当に今年で最後になることを惜しんでいた。



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