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二年目の春・8

「立体映像追加するのか?」

「昨日で分かったネ。立体映像の需要はまだまだ高い。外にも立体映像を流して、少しでも店内の客を流れるようにするべきヨ」

翌朝横島達が仕込みにと早朝の仮設店舗に行くと、一足先に到着していた超鈴音と葉加瀬が立体映像の投影機を店の外部にも設置していた。

立体映像自体はすでに去年の麻帆良祭以降の麻帆良の行事で何度も使用しているが、まだまだ物珍しさがあり集客効果が高い。

それだけならばいいのだが無料にした結果、立体映像だけを見に来る客が多く店内の混雑の一因になっている。

超鈴音はそれを少しでも改善しようと店の外にも立体映像を設置して、行列に並ぶ人や立体映像だけを観たい人向けにメルヘンの映像を流すつもりらしい。


「そうだな。 人の流れが少しでも変わるならやる価値はあるか。」

「申し訳ないが仕込みは頼むネ。」

「ああ、任せとけ。」

プレオープン二日目にして対策を講じる超鈴音に横島や少女達は感心したり驚いたりするが、やる価値があるのは誰もが認めるところで仕込みと平行して行うことにする。

横島は木乃香達や五月と仕込みをしていくが、昨日の混雑ぶりから仕込みの量を増やしたり下拵えをする量も増やした。

それと店内には三十分で席を空けてくれるように頼む注意書きを各テーブルに設置もしたし、店の外には行列が並ぶ列を作る為の場所を三角コーンで作ったりと混乱がないようにそれぞれのアイデアを持ちより改善していく。


「みんな頼もしくなったな。」

「みんな去年は、横島さんに振り回されてましたからね。」

木乃香達ばかりが成長した訳ではない。

一年という月日は横島との関係に問わず、自分達で考え行動するようになっていた。

そういう意味では計画の段階やメニューの開発は横島や一部の少女に任せっきりだった者も、店の営業には積極的に関わり協力している。

日常ではなかなか見られないそれらの成長に、横島は少女達が大人になっていくのをしみじみと実感していた。


「あれ? タマちゃんは?」

「ああ、タマモは後でさよちゃんと来るよ。 最近は夜まで昼寝無しだからなぁ。 朝くらい遅くしてやらんと、麻帆良祭まで持たんかと思ってな。」

一方この日は朝から元気いっぱいのタマモの姿が見えず、やって来た少女達が探す様子が何度も見られた。

何時もならば真っ先に駆け寄りみんなに挨拶をしていただけに、居ないと寂しさを感じる程だ。

ただタマモはまだあまり自分で体調を考えて行動をセーブ出来なく、帰ったらバタンキューなので、横島とさよが心配して開店ギリギリの頃まで休ませることにしたらしい。

表向きはさよが疲れたので、タマモに一緒に居て欲しいと頼んだ形にしたが。

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