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二年目の春・8

「その件は君に任せよう。」

「分かりました。」

一方近右衛門は麻帆良祭も残り数日となり盛り上がる麻帆良の影で、暗躍する者達の対処に追われていた。

学園の技術を狙う産業スパイに魔法協会の機密や技術を狙う裏のスパイなど、それほど深刻ではないが放置も出来ない案件が幾つかある。

日本では悪のように言われるが海外の国には対外工作機関が存在する国は普通にあり、合法か非合法かは別だが情報や技術を集めようとしている。


「学園長。 メガロメセンブリアが少し騒がしいのですが。」

「らしいの。」

「ご存知でしたか。」

そして関東魔法協会としてはクルト・ゲーデルの一件でメガロメセンブリアが騒がしいのを掴んでいて、麻帆良祭で忙しいのにそちらの情報分析と対応で大忙しであった。


「では詠春氏の映像に関しては……」

「本物じゃよ。 クルト・ゲーデルは赤き翼の一員であったが、彼の行動がそのまま婿殿達の願いでも目的でもない。」

基本的には対岸の火事であるものの、詠春がクルトの師として知られていることや、先日には詠春がクルトを否定する映像が流れたりと微妙に無関係とは言いがたい。


「そうですか。」

「当面は動けん。 巻き込まれたくないからの。」

ここに来てクルト一派の分裂などもあり、情報が錯綜し始めていて地球側の各国魔法協会は、情報収集と分析を急いでいる。


「クルト氏の目的が地球側での魔法の公開という情報については、どうなのですか?」

「恐らく真実であろう。 奴の目的は魔法世界の救済じゃ。 その為にはワシらばかりか、地球の無関係な人々を巻き込むくらいは平気でするじゃろう。」

「そんな……横暴な……」

「立場が違うからの。 ワシらとて自分達の世界と国の為に魔法世界を見捨てておるようなものじゃ。 奴からすると手段を選ぶ気は無かろう。」

ただクルトの目的が地球での魔法の公開であるとの情報も一部では流れていて、地球側の魔法協会や一部の先進国などでは激震が走っていた。

まあ流石にそこまではしないだろうというのが大勢の見方だが、クルトを知る人間は本当にやりかねないと疑うし、地球側の国家や魔法協会の中には背後ではメガロメセンブリアが実は操っているのではと疑う者も居る。


「情報収集だけは欠かさんようにの。」

「……分かりました。」

二十一世紀になろうとも世界の裏側は変わらないという事実に、報告に来た幹部は顔色を青くして近右衛門の部屋を後にした。

平和な日本ではあまり実感できないが、世界の裏側は正直なところ昔とあまり変わってはいない。

その事実に関東魔法協会は、麻帆良祭というお祭りの裏側で魔法世界の情勢を気にする日々が続くことになる。

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