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その三

「それで、一つ聞きたい事あるんやけど…… 踊るGSのオファー来てるやろ?」

昔話が一段落した頃、銀一は複雑そうな表情で横島に尋ねる


「ああ、来てるみたいだな。 めぐみが内容を交渉してる最中だよ」

「やっぱり……」

横島の言葉を聞き、銀一はため息をはいて頭を抱えてしまう


(監督……、それだけは止めて欲しいって言うたのに……)

どうやら銀一はこの件の確認もしたくて、今日尋ねて来たらしい


実は横島達の踊るGSの出演には裏話があるのだ

テレビ局上層部やドラマのスポンサー筋では、銀一と横島が友人だと判明した後に友情出演でレギュラー出演させようとする動きがあったのである


しかし主役である銀一は、横島達の事を考えてその話を一切承知しなかった

横島達がテレビ出演など断っているのは知っているし、一度ドラマに出演すれば今後も横島達には芸能関係の仕事が舞い込むのは業界にいる銀一は誰よりも理解している

芸能人のプライベートの大変さを実感してるだけに、望まぬ横島達がそうなるのは避けたかったのだ


「横っち、断ってええよ。 俳優になりたいなら別やけど、芸能人も大変やで?」

先程までと変わって真剣な表情の銀一は、横島が自分を気にして受けるなら遠慮しないで断ればいいと告げる

横島の気持ちはありがたいが、友達だからこそそこまでさせたくないと銀一は思っていた


「うーん、有名になる大変さは多少理解してるし。 正直迷ってるよ。 でもな……」

銀一の言葉に横島は難しい表情で言葉を濁す

自分が未来から来たと銀一に言えない事が辛い


(銀ちゃんが俺を心配してくれるのと同じくらい、俺は銀ちゃんが心配なんだよな~)

横島達が未来から来なければ、銀一はトップアイドルから実力派俳優になる可能性が高いのだ

横島は自分達の行動の結果が予想もしない場所に現れる現状に悩んでるだけに、銀一の夢を壊したくなかった


「ただオファーは来てるけど、こっちが出した条件をテレビ局が飲むかは微妙なんだよ。 俺達にはGSとして譲れない事があるしな」

お互い悩んだまま言葉が途切れた頃、横島はプロデューサーとの交渉の内容を銀一に説明していく


「GSって難しいんやな……」

横島が簡単に自分達のGSとしての理念や考えを話すと、銀一は驚いたまま聴き入っている

ドラマを始める前に銀一も本などでGSについて勉強はしたが、横島や魔鈴のように相手の事を考えるなどなかった

まあ本や雑誌に書くようなGSは、大半が自分の活躍や功績を宣伝するのが目的である

それもGSの一面である事に変わりはないが、裏側の難しい問題には触れないのがやはり普通であった


「勧善懲悪なんて現実には無いしさ。 幽霊や妖怪も話し合いが出来る存在なんだ。 GSが正義の味方みたいなドラマには俺達は出れないんだよ」

少し苦笑いした横島は、自分達のGSとしての最低限のこだわりを伝える

しかしこれは、未来では銀一も理解してくれた事なのだ


この時代の銀一も、自分の理想やこだわりを理解して欲しいと横島は密かに願っていた


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