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麻帆良祭への道

横島が麻帆良祭関連の準備に追われる頃、東京の郊外のとある古ぼけたビルの一室に新しい会社が設立されていた

そこには《芦コーポレーション》と書かれた標札以外は何もなく、何の会社かすら分からない会社である


「昔……、あの女がこの世を動かすのは金だと言ってたらしいが、それは正しいのだろうな」

新しく出来たオフィスにはデスクが一つとパソコンが一台しかなく、そこにはどこかで見たことがあるような老人が座っていた


「そもそもこの国を勧めたのが間違いだったのかもしれん。 横島の性格上、親しくなった者達を見捨てられないことなど分かりきっていたのだしな」

老人はどこか面倒そうな表情で独り言を呟くが、残念ながら聞いてる者はいない


「理想と現実の区別もつかないこの国の人間の尻拭いをするのは勘弁して欲しいのだがな……」

もうお分かりだとは思うが、この老人は土偶羅の人型ボディである

この人型ボディは魔法世界に派遣したのとは別のボディであり、双方共に本体の土偶羅から半独立した存在だった

基本的には命令を受けて与えられた権限の範囲内で独自に考え行動する分身のような存在なのだが、この分身体が受けた命令は東京で会社を設立する任務だったのだ



そもそもの始まりだが、それは横島が近右衛門を守りたいと告げたのが始まりである

現状で近右衛門は第三者の横島や土偶羅が介入などしなくても自分で上手くやっているが、将来に向けた布石の一つとして人界や魔法世界に一定の力を持つ地盤が必要だと土偶羅は判断していた

かつて美神令子が行ったような金の力による様々な工作を行うにも、現状の横島と土偶羅では工作を行うだけの地盤がなかったのだ

まあ将来的には関東魔法協会との協力体制を取るのが理想なのだが、側面的な支援を行う地盤はどうしても必要だった


「問題は理想と現実を区別出来ん連中か……」

まあこの世界に地盤がない横島と土偶羅にはどうしても独自の地盤となる組織が必要なのは仕方ないのだが、問題は横島が住む国があまりにも危機管理が出来てないことである

そもそも土偶羅の判断としては関東魔法協会を潰すならば、日本を潰した方が早いだろうと考えるほど日本は危機管理が全く出来てない

基本的に土偶羅は横島が関わらない人間がどうなろうが全く興味はないが、横島自身は元々日本人なのだ

面倒事には関わらないが近右衛門や麻帆良の街以前に、日本が戦火に晒される危機だけは横島も動く可能性があった


「かつての二の舞にはさせられんからな……」

深いため息をついた土偶羅は意味深な言葉を残し仕事を再開する


《芦コーポレーション》

それは土偶羅の創造主であるアシュタロスが、かつての世界で神魔への反乱の前に人界の工作に使用していた会社と同じ名前の会社だった

世界各地にアジトを用意したり、技術や異空間アジトに保存する物を買い付けたりするのに利用した数多の工作会社のうちの一つの名前である


この会社の新しいオーナーは間違いなく横島なのだが、この時横島本人はまだ知らないことだった


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