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二年目の春・8

「タマちゃん。ご飯にしよか。」

「うん! おなかぺこぺこ。」

お昼の混雑が過ぎても行列は途絶えなかった。

とはいえ少女達も休憩や昼食は必要であり、交代でお昼にすることになる。

最初は木乃香や五月など仕込みから来ていた少女が休憩に入り、木乃香はタマモを連れてお昼にすることにしたが、店内は当然満席で座れない。


「タマちゃん、何食べたい?」

「これ!」

「アハハ。それじゃウチも同じものにしよか」

結局二人は隣の雪広グループの物品販売ブースに行きお昼ご飯を探すが、タマモが選んだのは自分がデザインした絵が描いてるわんこひつまぶし弁当だった。

仮設店舗があるのは元々雪広グループのパビリオンの中であり、イベント用の小さなステージとそれを観覧する屋外のテーブルと椅子もある。

二人は買ったお弁当をそこで食べることにした。

ちなみにタマモのお弁当代は木乃香が出していて、あとで横島に請求すれば払ってもらえるだろう。

バイト代で小金持ちな木乃香は請求しないだろうが。


「その糸、引っ張って少し待つんや」

「ひも?」

わんこひつまぶし弁当は駅弁などによくある、食べる前に温める弁当になっていて、タマモは初めてのことに興味津々な様子で過熱する為の小さな糸を引っ張った。

すぐに弁当の底が熱くなり、弁当が温まるのを目を丸くして見るタマモを眺めながら、木乃香は今も並ぶ行列に目を向けた。

行列自体は横島の店でも何度か経験してるが、今回はそれを凌駕している。

まさかこのまま最終日まで続くことはないだろうが、予想以上の混雑には木乃香ですら驚いていた。


「うわぁ。すごいね!」

「こっちも美味しいな~。」

このわんこひつまぶし弁当は冷めても美味しく食べられるように少し味を工夫していて、自分達が作ってる物とは微妙に違う。

それに同じ具材が三つの小分けになっているので、そのままと薬味を乗せたものと、出汁を入れた物の三通りの食べ方が出来るようになっていた。

ホカホカの湯気が出るお弁当にタマモは驚きながらも、どれにしようかなと迷いながら食べ始める。

店で立体映像を見ながらもいいが、青空の下でのお弁当もまたいいものだった。

中身のご飯を食べたらパリパリと箸休め感覚で食べられる器を食べれるし、出汁を入れて少し味を染みさせて食べるのもまた美味い。

木乃香とタマモはつかの間の休憩でお腹を満たして、次から次へとやってくるお客さんに午後も頑張ろうとやる気を出して店に戻ることなる。

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