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二年目の春・8

「今年は違うわね~。」

午前九時になると少女達はミーティングと、それぞれ役割のマニュアルを確認して開店準備をしていた。

麻帆良祭本番は今年も超包子から助っ人が大勢来る予定であるが、プレオープン期間は仕事を覚えるために短時間来る程度で、基本的には少女達で営業しなくてはならない。

昨年の経験から作業を可能な限りマニュアル化していて、懸念されたワンコひつまぶしも、ご飯や具材は全て用意された軽量カップに入れて盛り付けるだけにしている。


「うわ~。 テレビ来てるよ! テレビ!」

なお開店一時間前にも関わらず店の前にはすでに行列が出来ていて、他には学園の報道部は元より地元のケーブルテレビやローカルテレビに、ローカル新聞の取材とメディア関係者がかなり集まっていた。

昨年の覇者という看板は、少女達が思った以上に大きいようだった。


「こっちも美味しそう!」

「今日は二百個用意しました」

そして雪広グループが販売するワンコひつまぶし弁当の方も、この日から販売開始するらしい。

こちらは一口サイズのワンコひつまぶしを食べられる容器で小分けにした物が、二十五個並ぶ物を紙製の箱に入れた物になる。

食べられる容器は具材に合わせて少し味付けしていて、薬味にもなるようで店とはひと味違った仕様になっていた。

ダシも当然あるが、ただのお茶の容器ではなく透明な動物の形をした可愛らしい容器に入っている。

どうも駄菓子かなんかのジュースを元々は入れていた物を流用したらしいが。


「ハルナ。 あんたいつの間に……」

「ふふふ。 女は黙って仕事するものよ」

なおパッケージは絵本や店内のトレイに敷く紙と同様にハルナとタマモのデザインであり、ちゃっかり二人のサインが入っている。

あわよくば作家デビューをと本気で狙ってるらしい。

ただ基本的なコンセプトや図案がタマモだからか、ハルナらしくないほど健全で可愛らしい弁当になっていた。


「マスコミから店内を開店前に、少し撮影したいとの要望が来てるんですが……」

「どうしましょうか?」

「まあ、いいんじゃないか。 宣伝にならんと雪広グループで困るし。 超さん。 立体影像の方は?」

「いつでもいけるネ。」

マスコミへの対応は雪広グループに丸投げしているが、報道部以外のマスコミが集まるのは横島や少女達にとって予想外である。

急遽マスコミから開店前の店内撮影を頼まれた雪広グループの社員の人が仮設店舗に来ると、少女達と横島は話し合うが最終的には受け入れることになり立体影像が点灯されると、開店を待っていたお客さん達から拍手や歓声が上がる。

木の切り株のような外観が突如立体影像と合わさると、本当の木のようになったのだから驚きだった。

横島があれこれと指導した結果、手作りの外観もかなり精巧な出来で立体影像に負けてない。

ちなみに総合プロデューサーが何故かタマモなので、あやかと一緒にタマモも取材を受けることになる。



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