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二年目の春・8

この日の夕食は、仮設店舗の厨房で木乃香や五月が作ったカレーだった。

それほど凝った訳ではなく市販のルーを用いて作った物だが、当然コンビニのお弁当なんかを買うよりは安上がりになる。


「そう言えば、お化け屋敷でしたね」

「ん? 何が?」

「超さんの過去の私達が、この年の麻帆良祭でしたことですよ」

流石に徹夜は勘弁して欲しいのか、夕食を早々と済ませて準備に取り掛かるクラスメートを見ながら、夕映とのどかは夕食の後片付けをしていた。

そんな中、夕映はふと超鈴音に視線が向くと平行世界の自分のことを思い出す。

実感は全くないし、平行世界なんて言われても関係があるようでないのは理解しているが。


「超さんの過去の私達は、何を考え何をしようとしていたのでしょうね。」

「横島さんとタマちゃんが、居ないかもしれないんだよね。」

二人が知る平行世界の情報は多くない。

横島が居なくて、横島が本に封印されてるのを見付けたタマモも居ない可能性が高いことくらいだ。

夕映ものどかも学校以外の日常の大半は横島の店に居ることが多く、横島とタマモは家族以外では一番身近な存在と言っても過言ではない。


「そもそも私達は、超さんが何を変えようとしたのか知りませんが……」

横島とタマモの居ない世界なんて、考えられないなと素直に二人は思う。

お人好しで賑やかなのが好きで、その上ちょっとエッチなのに奥手だという変人の横島と。

周りの人達みんなと仲良くなってしまい、素直でいい子なのに仲間外れだけは嫌だと怒るタマモ。

二人に共通するのは意外に寂しがり屋だということか。


「よく分からないけど、超さん。 吹っ切れたみたいだね。」

「ええ。 本当に良かったです。」

平行世界の自分達は何を考え誰を好きになってるのか聞いてみたい気もするが、聞かない方がいいのは理解していた。

ただ悔いがなく幸せになってればいいなとは思うが。

それよりも夕映とのどかは、超鈴音が少し前から吹っ切れたように明るくなったことが何より嬉しかった。

禁断の歴史改変をしようとした罪は重いのかもしれない。

しかしクラスメートであり、まだ中学生の超鈴音が罪だけを背負って生きるのはあまりに残酷だと思う。

願わくばこの世界で、自分達と一緒に明日を夢見て欲しい。

タマモに立体映像を見せてる超鈴音を見て、二人はそんな願いを持っていた。

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